「コーチング」ってよく耳にしたことはあっても、実はあまりよく知らない、なんて人もいるのではないでしょうか。「今さらコーチングって何?とは聞きづらい」とか、「コーチングって、なんか怪しくないの?」という声も時々聞いたりします!笑
筆者はコーチングを受けてみて、そのスピード感を持った問題解決力に興味を持ったので、実際に考え方を勉強してみました。すると、この考え方を仕事にも活かせることに気づきました。
今回は、コーチングを勉強した体験を元に、コーチング理論や仕事に活かす方法について書いてみます。
これを読めば、「コーチングとカウンセリング/コンサルティングの違い、コーチングを受けてみた体験談、覚えておきたいコーチング理論、社内導入例、マネジメントで実践し、仕事に活かす方法」が分かっちゃいます。
早速読んでみましょう!
予備知識:コーチングとは
コーチングは、コーチとクライアントが2人で、対話しながら問題を解決していくプロセスです。アメリカ発祥と言われていて、日本ではビジネス分野を中心に広まっています。
コーチングでは、1対1のセッションを通して、コーチが色んな質問をします。コーチは質問を通して、クライアント自身が気づいていなかった本当の問題に気づかせ、解決策を見つけ出すまでをリードします。
コーチングの成功の定義とは、クライアントが自分で決めた解決策を実行することを指します。
コンサルティングとの違い
コンサルティングとの違いについて説明します。コンサルティングでは具体的なアドバイスを行って解決策を提示するのに対し、コーチングではクライアントへのアドバイスは行いません。
コーチはあくまでもクライアントの問題を整理し、具体的な解決策を自分で見つけるのを援助します。
カウンセリングとの違い
コーチングは、カウンセリングとも異なります。カウンセリングは、過去のトラウマの癒しや治療を行うので、過去~現在に焦点を当てていきます。
一方コーチングでは、現在~未来の具体的な問題を整理し、今後の行動を決めていくという違いがあります。
体験談:コーチングのセッションを受けてみた
ということで、プロのコーチングを一度受けてみました!対面とオンラインどちらも選択できましたが、時間の都合の付きやすいオンラインでお願いしました。トピックはお仕事関連、女性のコーチによる約1時間のセッションでした。
開始早々、コーチからの質問で、自分がなるべく考えないようにしていた核心部分や、痛い所をズバズバ突かれます。そしてコーチの質問に答えるために、必死で脳みそをフル回転させた記憶が。
- コーチ「何でそこまで考えないんですか?考えなくて何か良いことありますか?」
- 筆者「うっ…良いことはありません」
- コーチ「じゃあ考えてみましょう」
- 筆者「…考えてみましたが、よく分かりません(T-T)」
例えばこんな感じのやり取りです。(筆者の返答は、思い出しても気持ちの良いほど、ヘタレですね。笑)
セッション中は、コーチがクライアントに、自分の深層心理に気づいて分析するような質問を、あらゆる方向から投げかけます。
クライアントはそれに答えて行くことで、それまで自分が気づいていなかった心理や、考えないようにしていた暗黒部分を正面から見つめ、それをコーチに洗いざらい吐露します。
自分でも認識していなかった感情を口に出すことになるので、初めて体験する時は、結構ショッキングかもしれません。場合によっては、途中で泣き出す人もいるのだとか!
上の図のように、クライアントが自分では見えていない部分を、「ブラインドスポット」と言います。
コーチは、クライアントのブラインドスポットに焦点を当てる質問を投げかけることで、クライアントは普段考えないような角度で問題に切り込むことができます。
筆者はコーチングを受けた結果、1時間で解決策を見つけることができ、自分が思っていたよりも早く問題が解決してしまいました。この「1時間で人生がサクサク決まる」というスピード感は、忙しい現代人にとって「時短」にもつながり、助かる人も多いのではないでしょうか。
コーチングが終わった後にはスッキリして、早く次の道に進みたいという気持ちでした。コーチング成功です!
体験談②:コーチングの思考法を勉強してみた
コーチングって、問題解決にとても便利!と思った筆者は、コーチング理論を学ぶ講座に参加してみました。コーチングの考え方を身に付ければ、自分で解決策を導き出すことができるようになる、そうすれば仕事にも活かせる、と思ったのです。
講座では、だいたい次のような内容を勉強しました。
- コーチングで大切なこととは
- 傾聴(リスニング)とは
- 質問(クエスチョニング)とは
- コーチング理論
- コーチングサイクル
- クライアントのプロファイリング方法
- ケーススタディ
上記のプログラムで、前半にコーチングの理論を学んだ後、後半は参加者同士でケーススタディを行いました。半日の講座で、料金は5万円ぐらいだったと思います。
参加者は約20人弱、主に会社員の人が多かったです。男性と女性の割合は半々ぐらいで、年齢層は20-30代がメインでした。
先生曰く、「コーチングで最も大切なことは、クライアントとの間に信頼感を築くこと」だそうです。なぜなら信頼感が無かった場合、クライアントは心を閉じてしまい、コーチングに必要なことを話さなくなってしまうためなんだとか。
コーチング理論
ここで、ぜひ覚えておきたい「コーチング理論」についてご紹介します。
コーチングの理論とは、「クライアントの現在の状態と、未来の状態(なりたい状態)を定義し、そのために取るべき行動や、障害(行動を阻害するもの)を聞き出し、分析していく」というモデルです。
上の図のように、コーチングを通して次のことを整理していきます。
- 現在の状態を定義する
- 未来の状態(なりたい状態)を定義する
- 現在の状態から、未来のなりたい状態に近づくために必要な行動を考える
- クライアントを現在の状態に戻してしまう、物理的・心理的な障害とは何かを分析する
①~④のモデルに当てはめて、クライアントの問題を分析していきます。最終的にクライアントが、②未来の状態に近づくための策を自ら考え出し、実行段階まで導くのが、コーチの役目です。
よく考えるとこのプロセスって、仕事にも活かせそうですよね!
例えば、管理職が部下を育成して行きたい時、上司や先輩から言われるのではなく、自分で目標を持ってもらうために、コーチング手法を応用することができます。部下が自分自身で目標を設定して、取るべき行動を決めて行くのを、上司が導くこともできるのではないでしょうか。
これらの①~④の項目は、クライアントがいる場合はクライアントから聞き出しますが、もし自分の問題を分析する場合は、自分で考えていきます。
初めてやってみる場合は、紙に書いた方が分かりやすいかもしれません。①現在の状態、②なりたい状態、③取るべき行動、④障害、の4項目に対して、自分の状況を書き出して、分析していきます。
こういったコーチングの思考を身に付ければ、簡単な問題であれば自分で解決策が導き出せるようになります。会社での実践例は、この記事の後半に書いているので、そちらも読んでみてくださね!
講座で実践練習してみる
講座の参加者同士で、お互いに何回か練習してみました。トピックによっては、心理的な部分の深い分析が必要になってきます。数回練習したぐらいでは、そう簡単にクライアントを分析できない場合も。
例えば、次のような練習を行いました。トピックは「今日の気分」で、クライアント役が話したいことを話してもらい、コーチングしました。
- コーチ役「今日の気分はどうですか?」
- クライアント役「今日の気分は疲れています。以前と比べて、毎日ものすごく疲れていることに悩んでいます」
- コーチ役「疲れていることに悩んでいるんですね。仕事の質は以前と比べて変わりましたか?」
- クライアント役「仕事量が少ないのに、疲れているんです。こんな自分が許せません」
- コーチ役「自分が許せないんですね。許せなくて何か困っていますか?」
- クライアント役「特に困ってないですね」
- コーチ役「どうして許せないと思うんですか?」
- クライアント役「自分の生産性が落ちていると思ってしまうから。自分に満足できないです」
- コーチ役「…」
練習では、ここでコーチ役がこの先どういう風に返答していいか分からなくなり、終了してしまいました。先生からもらったアドバイスは、次の4つでした。
- このクライアントにとって、仕事量が多いこと=生産性の高さ、になってしまっているのが問題
- でも実際は仕事の質が上がっていれば、仕事量は減る傾向にある
- 仕事の質が上がって量が減っていれば、実は生産性は上がっている
- それにコーチが気づいた上で、クライアントにも気付かせる質問を投げかける必要がある
このように、会話しながら本質を見て行かないとコーチできなかったりします。一見簡単そうに見えても、なかなか奥深い。
参加者同士でグループになり、コーチングしている様子を先生が見てくれているのですが、ある時「あと質問3個で結論まで持っていけるよ」と、見ていた先生に言われたこともありました。
「あと3手」って、詰将棋みたいですよね!笑
でもそんなヒントを貰っても、初めてコーチングをやった人には、どうやってあと3手で解決すればいいのか、全く分からなかったりします。(T-T)
先生は、実際にクライアントを分析するまでに、何十時間も練習したと言っていました。やはり練習あるのみなんですね。
深いコーチングになりやすいトピックとは
ここで、「自分で解決できそうな簡単なトピックと、深いコーチングになりやすいトピックの違い」について考えてみます。一般的に、深いコーチングになりやすいトピックは、以下と言われています。
- 家族関係
- 自信
- 達成感 など
上記のように、家族のことや、自分の価値観に関わるようなトピックは、深い分析が必要で、初心者がすぐにできるトピックではないかもしれません。家族のことをコーチングしてほしい場合は、プロに任せましょう!
例えば「仕事の進め方」というトピックの場合、自分の価値観に大きく関わることもないので、初心者にも取り組みやすいトピックと言えそうです。
社内のコーチング制度の例
企業によっては、社内コーチングを導入している会社もあります。
筆者が以前いた会社では、社員が外部のコーチング講座を受けて、部下とのコミュニケーションに実践していました。この場合、コーチ役は自分の上司になります。
コーチングが社内のコミュニケーションをどう変えるのか、見て行きましょう。
曖昧なコミュニケーションを改善する効果
例えば、上司と部下のコミュニケーションで、こういう会話があるとします。
- 部下「上司さん、仕事が終わりません。どうすればよいでしょうか」
- 上司「俺の若い時は、寝ずに仕事を頑張ったものだ。だから、お前(部下)も頑張れ」
上記では、部下から仕事の相談を受けた上司は、自分の苦労話を共有することで部下を励ましています。
一方、相談者の部下にとっては、この会話では、「業務の『何を、どのように、どこまで』頑張ればいいのか」が、正しく理解できていない可能性があります。その結果、部下の建設的な行動に繋がらなくなってしまうのです。
そうなるといつまでたっても業務が改善せず、時間がもったいないことになっちゃいますよね。
このような曖昧なコミュニケーションを改善したい場合には、コーチングは有効と思います。上司がコーチングを学んで、コミュニケーションに活かすことで、具体的な行動をアドバイスできるようになる可能性は高いです。
コーチングを学んだ後の上司は、すっかり別人になり、部下と次のような会話ができてしまいます。
- 部下「上司さん、仕事が終わりません。どうすればよいでしょうか」
- 上司「仕事が終わらないんだね。今は何の業務に一番時間が掛かっているの?」
- 部下「プロジェクトAのメンバーが最近入れ替わってしまい、慣れた人が自分しかいなくなっちゃったんです。不慣れな人に頼めないことが多くて、自分が色々引き受けてます」
- 上司「プロジェクトAで、新しい人にお願いできる部分はある?」
- 部下「あるとは思いますが、その切り分けができていません」
- 上司「業務の切り分けができていないんだね。その理由は何だと思う?」
- 部下「自分自身に余裕が無いのと、新しい人に頼んで失敗したくないからです」
- 上司「余裕が無くなっちゃってるんだね。じゃあまずは、業務分担を見直すところからやってみたら?」
- 部下「ありがとうございます。今から分担を考えてみます。後で30分ぐらいミーティング入れてもいいですか?」
- 上司「もちろん」
上記のような感じで、部下の仕事が終わらない本当の原因が明らかになり始めました。部下は自分に余裕が無く、業務の切り分けができていないようです。責任感が強く、よく働くタイプなのかもしれません。
上司は主に、①部下の精神面に余裕が無い点、②業務の切り分けができていない点を解決しようと考えました。①と②はリンクしていて、②の業務分担を解決すれば、①の精神的な余裕が出てくる可能性があります。
ということで、ミーティングで業務分担の見直しに取り掛かりながら、部下の精神面もフォローアップしていくことになりました。ゴールは近いんじゃないでしょうか!
仕事に活かす方法:マネジメントで実践
こうして実際にコーチング理論を学んでみて、マネジメントの仕事をする人には必須の知識なのではないか、と思うようになりました。
というのは、筆者が以前いた外資系企業では、自分の経験のある・ないに関わらず、専門外で未知の領域の業務でも、経験の豊富な分野と同じように管理して、結果を出していく必要がありました。
つまり自分が全く知見のない分野について、課題を抽出し、アプローチ方法を考えていかねばならないのです。「専門じゃないので、よく分かりません」とは言えず、「専門じゃないけど、やるしかない」という状況。
そんな中でも、コーチング理論を知っていれば、何とか乗り切ることができるのです。筆者はコーチングの理論を応用しすることで、課題・解決策・障害を見つけ出すことができました。
上の図は、先ほど勉強したコーチング理論を表しています。
- 現在の状態を定義する
- 未来の状態(なりたい状態)を定義する
- 現在の状態から、未来のなりたい状態に近づくために必要な③行動を考える
- クライアントを現在の状態に戻してしまう、④物理的・心理的な障害とは何かを分析する
この理論を応用し、①~④を仕事に当てはめていけば、取るべき行動が分かってくるという訳です。
コーチング理論を仕事に活かした体験談
コーチング理論を仕事に活かした体験談についても書いておきます。
例えば、会社で定期的に行われる「監査」がありますよね。自分が責任者ですが、全く知識のない部門の監査で、指摘された項目が多数あったとします。監査でオフィシャルに指摘された以上は、すぐにでも根拠のある対応を考え、実行しなければなりません。
自分の専門外の分野について口を出していかねばならない場合、その分野に精通している人またはチームと上手く連携し、色々と状況を聞き出していく必要があります。
筆者はまず、その分野に「精通している人たち」にヒアリングし、他社の友人(詳しい人)にもアドバイスをもらい、何が問題でどうするべきなのかを洗い出しました。そこから行動計画を作り、「精通している人たち」に見てもらい、実行を依頼しました。
場合によっては「精通している人たち」は、その道何十年のベテラン勢、しかも職人気質だったりします。筆者は仕事中は、(もしかしたら言いたいことを言っているように見えたかもしれませんが、)常に尊敬の念を忘れないよう、気を付けていました。
このような感じで、コーチング理論を仕事に活かしてみた結果、全く未知の分野でも、①現在の状態、②あるべき状態、④その障害などを、精通している人たちからヒアリングすることができ、③行動計画を作って、何とか実行に移すことができたのです。
実行に移して成果が出てくると、その分野のベテラン勢にもだんだん認めてもらえるようになります。細かい業務に精通しているプロの人たちに、「筆者さんは頼もしい」と言ってもらえた時は、ちょっと嬉しかったです!
ということで、コーチング講座で数回練習しただけのレベルでは、「人生相談」を受けるレベルにはなりませんが、会社での実務に活かすことはできるんじゃないかなと思いました。
読者の皆さまも、コーチング理論を覚えておけば、未知の分野の仕事に当たった時でも、何とか乗り越えられるはず。この機会に身に付けてみましょう!
まとめ
以上、「コーチングとカウンセリング/コンサルティングの違い、コーチングを受けてみた体験談、覚えておきたいコーチング理論、社内導入例、マネジメントで実践し、仕事に活かす方法」について書かせていただきました。
コーチングは、一度覚えたら仕事や日常生活に活かせてとても便利だと、改めて思いました。問題解決のスピード感がアップします。皆さまもぜひお試しください。
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