スペインの「カミーノ・デ・サンティアゴ」という中世から続く巡礼の道があります。
フランスのピレネー山脈から始まり、スペイン北部を通って西に向かい、キリスト教三大聖地の1つ「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」に向かう、約800㎞の道のりです。
「一度は行ってみたいけど、800㎞も歩けるかな?」という方や、「女性であまり体力がなくても行けるの?」と不安な方もいるかもしれません。
そこで筆者が女性一人で110㎞歩いてみた時の体験をもとに、「カミーノの概要、準備のポイント、現地で調達したもの、持っていけばよかったと思ったもの、マドリードからサリアへの行き方」などをまとめてみました。
これを読めば、サリアからの巡礼は抜かりなく準備ができちゃいます!それでは早速ポイントを見て行きましょう。
巡礼のやり方は人それぞれ
スペインの巡礼の道「カミーノ」を、徒歩で100㎞以上、または自転車で200㎞以上を達成した人には、「巡礼証明書」が発行してもらえます。この証明書と巡礼体験を求め、世界中から訪れる人が絶えません。カミーノは特に春~夏にかけてがハイシーズンで、冬は寒すぎるため閉鎖しているという噂も。
カミーノの起点となるのは、フランスのピレネー山脈の麓にある「サン・ジャン」という町。ここからスタートする場合、ゴールのサンティアゴ(スペイン)までは約800㎞です。
800㎞となると、徒歩では1か月ぐらいかかるため、まとまった休みが取れないと、なかなか挑戦しづらいかもしれませんね!
「1週間ぐらいしか休めないけど、最短で証明書が欲しい」という方や、「800㎞は無理だけど、ためしに一部分だけ歩いてみたい」という方には、サリア~サンティアゴ間の、約110㎞を歩くのがポピュラー。
カミーノでは、巡礼の仕方も人それぞれ。筆者は巡礼を通して、次のような人たちにお会いすることができました。
- 毎年数100㎞ずつ、何年かに分けて800㎞をコンプリートする計画のフランス人
- 無事800kmコンプリートしたけど、楽しいからこのまま最果ての町フィステーラまで歩くぜ!というドイツ人
- ピレネー山脈から800㎞歩いたけど物足りないから、来年はパリからサンティアゴまで歩く、と話す日本人
などなど。参加者の年齢層も幅広く、上は60代ぐらい、下は親と一緒の高校生まで出会いました。(あれ学校は…?)
とりあえず、皆さんそれぞれ自由に楽しんでいるようです。
サリア~サンティアゴの110㎞を歩いた時の計画
筆者は以前5月に、サリアからサンティアゴまでの110㎞を6日間で歩きました。この距離は「5日間で歩く人が多い」と聞いたので、当初は5日で歩く計画をし、1日をバッファとして残していました。
「110kmも歩くのは初めてだし、途中の経過を見てマイペースに行こうかな」と思い、一般的に徒歩で5日かかる道のりであれば、体力の無い自分は6日ぐらい取っておこう、と考えたのです。
ところが実際に歩き始めたら、予想通り6日間かかってしまいました。実際に荷物を背負って、毎日20㎞歩くというのは、想像以上にハードだったからです。
具体的には、次のような配分で歩きました。それぞれの区間を歩いた様子については、リンク先の記事に詳しくまとめています。
- サリア~ポルトマリン(21.5㎞)
- ポルトマリン~パラス・デ・レイ(22km)
- パラス・デ・レイ~メリデ(12km)
- メリデ~アルスア(13.5㎞)
- アルスア~オ・ペドゥローソ(19km)
- オ・ペドゥローソ~サンティアゴ・デ・コンポステーラ(20km)
このように毎日少しずつ、だいたい一日20kmぐらいを目安に歩いていました。
旅の前半に膝の裏側を痛めたこともあり、いつリタイアしてバスに乗ろうかと毎日のように(!)考えていましたが、何とかゴールまで到達できました。
地図で見ると、筆者のサリア~サンティアゴまでの旅程は、次のような感じ。
スペイン巡礼の道「カミーノ」は、老若男女・国籍を問わず色んな方が挑戦しています。
「1週間あれば証明書がもらえる」と聞くと、気軽に行ってみたいところですが、やはり事前準備は重要になってきます。
準備は念入りに
100㎞の道のりを毎日歩くだけでも大変ですが、カミーノは全行程で「自分の荷物を背負った旅」です。準備は念入りに行いたいですよね。
参考までに、筆者が5月半ばにカミーノに行った時の経験から、「日本から実際に持って行ったもの、現地で調達したもの、これがあると良かったなと思ったもの」についてご紹介します。
実際に持って行ったもの
実際に持って行ったものは、以下の通りです。
- バックパック大、雨除けカバー、バックパック小
- ガリシア地方は雨がよく降るので、雨を想定した準備が必要
- 寝袋、耳栓、アイマスク
- 宿は巡礼者専用の男女共同ドミトリーに、格安(5ユーロ以上)で宿泊することが可能。2段ベッドや3段ベッドの所が多いので、他人のいびきが気になる方は耳栓が必須
- 巡礼者用の宿にはシーツと枕しかないので、軽くて温かい寝袋が必須
- トレッキング・シューズ(ゴアテックス必須)、シャワー用サンダル
- トレッキング用靴下、Tシャツ、ヒートテック類、タオルそれぞれ数枚
- 衣類は数枚だけにして、宿で毎日洗濯する
- レインコート、雨具、キャップ
- 石鹸、ニベア、日焼け止め、シャンプー類など
- カメラ、バッテリー、携帯、プラグアダプターなど
- ノート、ペン、ガイドブック
- 足に巻き付けるタイプの貴重品入れ(腰に巻くタイプの貴重品入れは、メジャーすぎて、すでに存在が知られているため)
最初、バックパック(大)に全て荷物を詰めて、自宅の体重計で測ったら12㎏ぐらいありました。
ためしに自分で背負ってみた瞬間、「重くて無理!」と思い、瞬時に断念。絶対必要なもの以外は、思い切ってカットし、12㎏→8㎏にまとめ直しました。
その時減らしたものは、主に衣類(Tシャツやスウェットなどの着替え、寝る時用の衣類)や、変圧器など電化製品だったと思います。
特に衣類は、「行ってみて本当に必要なら、現地調達すればよいかな」という判断でした。
Tシャツぐらいであれば、今やどこに行っても売っています。最低限必要な2枚ぐらいの衣類だけ持って行って、毎日宿に着いたら洗濯して干すのを習慣にしていた結果、現地では特に困りませんでした。
女性向けパッキング術:基礎化粧品を減らす方法
女性は化粧水・乳液・クレンジングなど、液体類の持参が多いけど、極力バックパックは機内持ち込みしたいですよね。バックパックを飛行機に預けたら最後、いつ届くか分からないですから。
手荷物をすべて機内持ち込みするために、筆者は「固形の洗顔石鹸とニベアのみ」で旅行に行くことが多いです。
- 固形の洗顔石鹸
- ニベア
上記2つだけでも、お肌は調子よかったです。お手入れ方法は簡単、「石鹸で洗顔後、顔が濡れた状態でニベアを付けて終了」です。これなら、化粧水も乳液も不要。
そもそも「化粧水の目的は水分保湿」で、「乳液の目的は油分で水分を閉じ込めること」だから、水とニベアで目的を果たせるのです。
特にスペインなど湿度が低い地域では、ニベアがあると全身に使えて便利。ニベアなら、スペインの町中の小さい店や薬局でも売ってるので、無くなっても現地調達できます。
ということで、市販の小さいプラスチックケースに、化粧品類の中身だけ入れて、手荷物は全部機内に持ち込みました。
バックパックと寝袋については、重要アイテムなので、以下に詳しく記載します。
重要グッズ①バックパック
自分の全荷物と全財産を入れて運んだり、日々の苦楽を共にするので、結構重要なパートナー。軽くて、背負いやすくて、ポケットが多いものがおすすめです。これだ!というものをゲットしましょう。

筆者は、画像の「ノースフェイスのテルス42」(女性用)を愛用しています。このバックパックは、実際に背負ってみると、とても軽くて快適。また、横から見た形もスリムなので気に入ってます。
バックパックの選び方については、バックパッカーのリュックのおすすめは?扱いやすいバックパック選びのポイント4つの記事でも詳しく書いています。こちらもお読みいただけると嬉しいです!
このノースフェイスとは別に、バックパック(小)も持っていきました。これは、宿に大きい荷物を置いた後で、町中にご飯や買い物に出かけるときに使うためのもの。
スペインのガリシア地方は、のどかで治安も良い地域なので、カバンを持ってウロウロ歩いても問題なかったです。
重要グッズ②寝袋
次に寝袋です。
毎日自分が背負って歩くことになるので、重量が軽い方が扱いやすい。春先のスペイン北部は結構寒く、朝晩の温度差もあるので、ダウンが入っている方が良いと思いました。

筆者は「モンベルのダウンハガー800 #3」を愛用しています。好きすぎて、家でもこれに入って寝たことがあります。値段は3万円ちょっとでした。
ダウンハガー800:お勧めポイント
この寝袋のおすすめポイントは、次の通り。
- ダウンが入っているのでふかふか、温かい、朝までよく眠れる
- 中に入ってみると、意外とスペースがあり、身動きが取れて快適。身長164㎝の筆者が入っても、窮屈さはない
- 重量600gぐらいと軽いので、毎日バックパックに入れて持ち運べる
- 横にチャックとマジックテープ、上にフードがついていて、密閉される
メーカーによると、この寝袋は「コンフォート温度4℃、リミット温度-1℃」とのこと。春先のスペインでベッドの上で使うには十分でした。
別の機会で、真冬の東京の室内で一度使ったことがありますが、床からの冷えが厳しかったです。冬場に床で使う場合は、下に保温シートを引いたり、ダウンがもっと入ったものにアップグレードした方がよいかもしれません。
ダウンハガー800:注意点
「モンベルのダウンハガー800 #3」はとても快適な寝袋で、スペイン巡礼にもおすすめですが、ちょっとした注意点も書いておきます。
この寝袋には、持ち歩き用の収納袋がついていて、30㎝X15㎝ぐらいの袋に収納して、コンパクトに持ち運ぶことが可能です。
でも筆者の場合、現地で毎朝5時に起きて、寝ぼけながらこの小さい袋に190㎝ぐらいある寝袋を詰め込む作業が、結構大変だったのです。
小さめの袋に、自分の身長以上の寝袋を入れなきゃならないのですが、ダウンがたっぷり入ってふかふかな分、袋に入らない傾向にありました。
「やばい、このまま袋に入らないのでは!?どうしよう、首に巻いてく?」と焦ったことも何回かあるほど。(´・ω・`)
収納にコツがあるのか?と思い、毎日色々と工夫したものの、あまり良い方法は見つからず。他の皆さんはサッサと収納していたので、恐らく、筆者の詰め込み方が未熟なだけだと思います。
初心者の方は、仮に袋に入りづらくても、「絶対に収納するんだ」という強い心を持ち、気合と根性で入れましょう!
それ以外はあったかくて軽くて、スペイン巡礼にぴったりな寝袋でした。
現地で調達したもの
次に、現地(スペインのサリア)で調達したものは、次の5つでした。
- 巡礼用の地図
- クレデンシャル
- 白い貝殻
- 足の痛み止めの薬
- 現地の地図
上記①~⑤について、順番に解説していきますね!

上の画像は、筆者が実際に使った、巡礼用の地図とクレデンシャルです。巡礼者の目印となる「白い貝殻」も、画像の左の方に写っています。
- 巡礼用の地図(必須)
- ミシュラン「Camino de Santiago」値段は10ユーロぐらい、サリアで購入
- サン・ジャン(ピレネー山脈の町)からサンティアゴまでの巡礼ルートを、34ページに渡って詳しく解説している
- 見開き1ページ=約20㎞、を目安に編集してある
- 距離、山の高さ、途中の町村間の距離、宿や薬局やツーリスト・インフォメーションの有無などの情報がある
- クレデンシャル(必須)
- 巡礼者の証明書で、教会やアルベルゲ(宿)で購入。3ユーロぐらい
- 巡礼中は毎日、バルや宿でスタンプをもらうことをお忘れなく
- 日本では、東京のカミーノ友の会が1000円で販売している模様
- 白い貝殻(必須)
- 巡礼者の印となる白いホタテの貝殻
- 現地にたくさん売ってるので、最初からバックパックに付けておいた方がよい
- 値段は店によって1~5ユーロぐらい
- 足用の塗り薬(痛み止め)
- 筆者は途中で足が痛くなり、病院で薬を処方してもらいました。受診やガリシア語でのやり取りなどが大変。日本から薬を持参すれば良かったと思いました
- 病院に行った時の話は、思わぬ怪我をした時の対処方法とは?の記事にまとめています
- 現地の地図

画像は、サリアのツーリスト・インフォメーションでもらった町の地図です。右側のリストには、ホテルやアルベルゲ(宿)の名前や連絡先が書いてあります。
サリアに限らず、ガイドブックに載っていないような小さい町でも、ツーリスト・インフォメーションに行けば町の地図が手に入ります。
そもそも、「その町にツーリスト・インフォメーションがあるかどうか?」という部分は、ミシュランの巡礼者用地図「Camino de Santiago」で確認可能。
日本から持って行くと良かったと思ったもの
参考までに、実際に行ってみて、「これがあると良かったな」と思ったものを挙げておきます。筆者が次回カミーノに行くときには、持参したいグッズは、次の通りです。
- トレッキングポール(2本)
- 筆者は下調べが甘く、特に何も持たずに行ってしまったが、現地ではだいたい皆トレッキングポールを持って歩いていた
- 現地では「ガチで一歩も歩けない気分」になったので、1本でもあるとメンタル的にも違う
- 巡礼者仲間で2本持ってる方が、見かねて1本貸してくれたりしました
- 小さく収納できるダウンジャケット
- 5月のスペイン北部の気温は東京の3月下旬ぐらいの体感だった
- 公営の宿のドミトリーやシャワー室、教会などはだだっ広くて暖房が効いていない所もある
- 足が痛くなった時用の薬(塗り薬、湿布など)
- オーディオブック、MP3など
- 歩いている時が一日の大半を占めるので、耳で聞けるものがあると便利
特にトレッキングポールは、歩きなれていない人にとっては、現地では必須アイテムだと思いました。

トレッキングポールというのは、上の画像の、右手の人が持っているような杖のことを指します。
皆さんは、忘れずに持って行ってくださいね。
マドリード空港~サリアへの行き方
最後に、スタート地点の町となる、「サリア」への行き方を書いておきます。サリアは小さい町なので、普通のガイドブックには載っていない場合があり、筆者も自分で色々調べてたどり着きました。
マドリードのバラハス空港からサリアまでは、電車でもバスでも乗り換えが発生します。
下記2つの、どちらかの方法で行く方が多いようです。
- 電車(Renfe)
- 所要6時間ぐらい
- 旅程①マドリード空港~マドリードのチャマルティン駅
- 旅程②チャマルティン駅~サリア、金額32ユーロぐらい
- バス
- 所要8時間ぐらい
- 旅程①空港~ルーゴ:バス(Alsa)、所要7時間ぐらい、金額42ユーロ
- 旅程②ルーゴ~サリア:バス(Monbus)、所要30分ぐらい
筆者が行ったときは、空港から出ているAlsaの「夜行バス」で行きました。
理由は、マドリードの空港に着くのが夜中21時過ぎだったので、深夜に市内に出て電車を乗り継ぐよりも、空港から直接ルーゴ行きのバスに乗った方が安全かなと思ったから。
リスクとしては、もしマドリード着のフライトが遅延したら、深夜にマドリードで宿探しが発生する点。幸いにも、この時の飛行機は遅延しなかったので、夜行バスに上手く乗り継げました。
実際にバスで何回か移動してみて、スペイン国内はバスが充実していて旅しやすかったです。夜行で行くメリットは、以下だと思います。
- 移動しながら睡眠が取れる
- 宿代が一晩不要
- 目的地に着いたら朝なので即動ける
このように、「寝ている間に次の目的地に行けてしまう」というのは嬉しいですよね。
目的地に着いたら朝なので、一日の始まり時間が有効に使えます。もちろん、行かれる方のお好みやスケジュール、体力などに合わせてご検討ください。
まとめ
以上、日本からスペインの巡礼の道に行くにあたり、「カミーノの概要、準備のポイント、現地で調達したもの、持っていけばよかったと思ったもの、マドリードからサリアへの行き方」までをまとめてみました。
一般的な「スペイン」のガイドブックにはなかなか載っていない部分なので、参考にしていただければ嬉しいです。
カミーノでは、バックパックに全荷物を入れて背負って毎日歩くことになるので、特に女性の方は不安もあるかもしれませんが、パッキングや準備を入念に行えば、ある程度負担は減らせると思います。
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