スペイン巡礼の道(カミーノ)で、サリアからサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの110㎞を、女性一人で歩いた体験記事です。4日目はメリデ~アルスアの約13.5㎞を歩きます。
カミーノに興味を持っている方やこれから歩く予定の方は、「ガリシア地方に色んな町があることは分かったけど、中でも一番おすすめの町ってどこなの?」って思う方がいるかもしれません。
確かに沿道はどの町も治安が良くて、現地の人達も巡礼者をサポートしてくれるのですが、中でも今回訪れたアルスアは、史上最高の町だと思いました。
そんなアルスアの町と人の魅力について、今回とことん語らせていただこうと思います。そしてガリシア語とカスティリャ語の違いについても、少しだけ勉強できちゃいます。
このブログを読めば、カミーノに興味がある方も無い方も、アルスアに行ってみたくなること間違いなしです。早速読んでみましょう。
4日目・メリデ~アルスア
本日も朝6時ぐらいに宿を出ます。上の画像のように、まだ夜が明けきる前に出発したので、朝焼けを見ながら歩き始めます。
筆者が行ったのは5月でしたが、朝は気温が低くて、摂氏10度以下ぐらい。早朝の町はまだ静かで、ほとんど誰もいません。
「どこかに朝ごはんを食べるバルは無いかな」と探しながら歩きます。
4日目にもなると、ちょっと巡礼生活にも慣れてきました。雰囲気のある景色を見ながら、朝から良いお天気の中を歩けるのが、とても気持ち良いです。
上の画像の右手に、巡礼の道を示す黄色い矢印と貝殻マークがあります。「この道を進んでいけばOKだな」と確認しつつ、静かな住宅地を横切ります。
日が昇り切り、少し気温が上がると、今度はモヤがかかってきました。画像のような森に入っていきます。
巡礼ルートには、筆者以外にほとんど誰もいません。早朝の時間帯に刻々と変化する景色を独り占めすることができて、とにかく最高な気分です。
メリデから30分以上歩いたでしょうか、やっとバルを見つけました!画像は、朝ごはんのカフェ・コン・レチェとマーブルケーキです。
お腹が減っていたので、テラス席で無心に食べてると、顔見知りの巡礼者がすれ違いざまに「おはよう」とか声をかけてくれます。
巡礼者仲間がバルで休憩しているのを見ると、つられて自分もバルに入り、休憩が始まってしまう人も。笑
バルを出てしばらく歩くと、画像のような森の中の牧場を通りました。「牛だ!」と思って柵の外から見ていたら、1頭がゆっくりとこっちに近づいてきて、無言でこっちを見ていました。牛は結構、好奇心旺盛。
しばらく見つめ合っていると、何だか、「牛を覗くとき、牛もまたこちらを覗いているのだ」みたいな気分になってきます。
ガリシア地方は牛乳チーズの生産が盛んで、「ケソ・アルスア=ウジョア(Queixo Arzua-Ulloa)」、「ケソ・テティージャ(Queixo Tetilla)」などで知られています。代表的な「ケソ・アルスア=ウジョア」は、アルスアとウジョアという村の名前が由来となっているそう。
この「ケソ・アルスア=ウジョア」の登録農家数については、最新の情報では次のようになっています。(2014年現在)
- 牧場主:1,222
- チーズ屋:21
- 生産量:3,209トン
- 推定経済価値:1940万ユーロ
「ケソ・アルスア=ウジョア」の牧場だけでも、1200以上あるとは、驚きですね。酪農の町アルスアでは、毎年3月に「チーズ祭り(Festa do Queixo)」というイベントも行われています。
酪農家がチーズのお店を出したり、チーズを使った料理を紹介したり、牛の乳しぼり体験、音楽のライブなども行われるそう。どうりで、巡礼の道にも牛がたくさんいるわけですね。
この辺りを歩いている時の景色は、画像のような感じ。ひたすら緑が広がっていて、畑や農家が続いています。
とにかく歩いていて気持ちが良いです。
巡礼者たちは、画像のような雰囲気でトレッキングしています。すれ違う時の挨拶は、「ブエン・カミーノ!(良い巡礼を)」でOK。
画像の手前のお二人は、荷物が少ないので、恐らく巡礼の道2日目の記事でご紹介したモチーラ・エクスプレスに預けていると思われます。
住宅街を歩いていると、画像のような子犬が家の隙間から飛び出てきます。可愛いすぎるので、足を止めてしばらく遊びました。
こうして犬と遊んでいるうちに、後から来た巡礼者に一通り抜かされていきます。「そろそろ行かなきゃ」と思って立ち上がると、犬「えっまだ遊ぶよね?」みたいな感じで何回でも飛び跳ねてついてくるので、15分ぐらいは遊んでいました。。笑
お昼の12時頃にアルスアに到着しました!画像は、町中にあった教会です。到着後は、その日一緒に歩いた人たちと、バルで一杯飲んで休憩しました。
この時点で、時刻はまだ12時頃。「このあと、20㎞歩く」と言って次の町に行った人もいましたが、筆者は本日の目標13.5㎞は達成したので、ひとまず終了としました。
アルスアのおすすめ宿
アルスアでは、「Via Lactea」というアルベルゲ(宿)に泊まりました。一泊10ユーロぐらいで、公営の宿の倍の値段でしたが、ここは超おすすめ。
部屋がとても清潔で、ドミトリーが男女別になっていたり、細かい所まで気配りがあって、居心地が最高なのです。巡礼中に唯一ドライヤーを見つけたのも確かここだったと思います。
上の画像は、「Via Lactea」の居間です。
筆者は普段あまり宿の写真を撮りませんが(寝るだけだから)、ここだけは感動のあまり撮ってしまいました。アルベルゲの食堂って、古い長テーブルが並んでいるだけの味気ないものだったりするのですが、ここはちょっとしたホテルみたいな雰囲気。
上の画像の「Cocina」という所がキッチン。壁の奥にコンロなどがあり、自由に使ってよいので、自炊もできます。スペインは乾燥した気候なので、外のテラスで食べても気持ち良いですよ!
宿のおばちゃんのガリシア語講座
天気の良い午後のうちに洗濯を終えて、宿のおばちゃん(ガリシア人、60代ぐらい)とおしゃべりしていました。
スペインは、地方によって言語がかなり異なる国。ガリシア地方、カスティリャ地方、バスク地方など、地域によって話される言葉が異なります。
この時は、筆者は日本で勉強したカスティリャ語(標準スペイン語とされる)で話し、ガリシア人のおばちゃんは、筆者のためにカスティリャ語で話してくれました。
おばちゃん「私が小さかった頃は、学校ではカスティリャ語を国語として学んだよ。だから、ガリシア語はちゃんと習ってないんだよね。」
なんと、以前はガリシアの学校ではカスティリャ語を教えていたとのこと。スペインでも「標準スペイン語はカスティリャ語」という認識だったのでしょうか。「だからガリシア出身者の自分でも、ガリシア語で分からない言葉がたまにある」と言っていました。
おばちゃん「でも最近の子供たちは、学校でガリシア語もカスティリャ語も、両方習うようになったんだよ。」
とのこと。ガリシアの人たちはバイリンガルなんですね!
筆者はおばちゃんと仲良くなり、質問攻めにしてガリシア語を教えてもらいました。特にスペインの巡礼の道3日目の記事でも少し言及したのですが、カスティリャ語と比べて、前置詞と冠詞がだいぶ違う気がしていたものの、文法がよく分からなかった所を教えてもらいました。
下記、おばちゃんに聞いた「ガリシア語とカスティリャ語の対比」についてのまとめです。これを知った時は驚愕でした。
でもこれを学んだことで、ガリシアに来てから、町中の看板などで意味が分からなかった情報が、少しだけ理解できるようになりました。
- 男性単数:カスティリャ語「El」=ガリシア語「O」
- 男性複数:カスティリャ語「Los」=ガリシア語「Os」
- 女性単数:カスティリャ語「La」=ガリシア語「A」
- 女性複数:カスティリャ語「Las」=ガリシア語「As」
上の変換を見ていただくと分かる通り、カスティリャ語と比べて、ガリシア語は冠詞が全く異なります。カスティリャ語「La」=ガリシア語「A」と言う風に、少し短縮されているようです。
一方、元々カスティリャ語には、「A」や「Os」という単語が別の意味で存在しています。つまり、ガリシア語の「A」をカスティリャ語の「A」の意味で取ってしまうと、「意味が全く分からない!」ということになります。
筆者がガリシア語を読んでもピンとこなかった理由は、ここにあったようです。
更に、おばちゃんのスーパーガリシア語講座は続きます。
- カスティリャ語「En la」=ガリシア語「Na」
- カスティリャ語「En los」=ガリシア語「Nos」
上記のように、ガリシア語では前置詞と定冠詞がくっついて、新たな単語となっているのだとか。「Na/Nos」以外にも、各種色々あるそうです。(筆者も全部は理解しきれておりません)
ここまでくると( ゚д゚)ポカーン でしたが、ガリシア語の文章を読んでも、このルールを知らなければ意味が分からなくて当然だな、と思いました。
まさに「目から鱗」とは、このこと。
上の画像は、アルスアの町中にあった石碑です。この石碑に書いてあるガリシア語も、おばちゃんに教えてもらった今なら分かります。
- ガリシア語「Camiño do Peregrino」=カスティリャ語「Camino del Peregrino」
「ñ」は、世界中の言語でもスペイン語にしか使われないアルファベットです。最近の英語化に伴い、「ñ」をなくして「n」に統一しようか、という話がスペインで出たこともあったそうです。でも国名にも使われている「ñ」を、スペイン人はとても誇りに思っていて、議論の結果、結局「ñ」はそのまま残された、という話を聞いたことがあります。
上の石碑の中の言葉、「camiño」にも、もしかしたら歴史的な理由があったりするのかも、なんて考えてました。カスティリャ語では「Camino」と言う所を、ガリシア語では「ñ」を使って「camiño」と呼ぶのですね。こうして、カスティリャ語とガリシア語を比較してみるのはとても興味深いです。
おばちゃん「宿にあるガリシア語の本、いくらでも持って行きなさい。ガリシア語勉強して!」
ありがとうおばちゃん。。筆者は本好きなので、めちゃくちゃ嬉しかったのですが、実際に荷物を背負ってあと40㎞ぐらい歩くことを考えると、1gも荷物を増やしたくないところ。
これは、究極の選択かもしれない。(T-T) でもせっかくなので、一番薄いアルスアの本をいただくことにしました!
上の画像が、宿でいただいた本(重さ約3g)です。アルスアと、周辺の町についてのガイドブックです。とても大事にしています!
二世代にわたる日本からの巡礼者
ガリシア語の次は、すっかり仲良くなったおばちゃんと、カミーノ談義が続きます。
曰く、前に日本人男性の巡礼者が泊まりに来た時、翌朝3時ぐらいに出発すると聞いて、暗くて危険だから懐中電灯を持たせてあげたそうです。そうしたら、後で日本からお礼の手紙と写真が送られてきて、嬉しくて大事に取っておいたとのこと。
その何年か後、彼が今度は娘さんを連れてこの宿に泊まりに来てくれたことがあったそうです。彼女はびっくりして、大事に取ってあった写真と本人を何度も見比べて、やっぱり本物だ!と思って嬉しくて、頬にキスしちゃったと言っていました。
おばちゃん「でも、日本人は挨拶でキスしないんでしょ?私はそれ知らなかったのよ…(´・ω・`)」
とても素敵なエピソード、そしておばちゃん可愛い。。その日本人も、アルスアとこの宿が大好きになって、また戻って来たくなったんだろうな、と思いました。しかも、娘さんにも見せたかったんだろうな。
その後、おばちゃんは「あなたも日本なんて遠い所から来てくれて、まあまあ…」みたいに言ってくれました。皆さん本当に良い人ばかりです。
日本からほとんど思い付きでカミーノに来てしまいましたが、生涯忘れられない思い出になりそうです。こうやって毎日自然の中を歩いていると、本当に細かいことがどうでもよくなり、人生自分のペースで歩いていこうと思うようになりました。
本日の経路
4日目は、メリデ~アルスアの約13.5㎞を歩きました。
まとめ
以上、史上最高におすすめの町アルスアについて、そしてガリシア語とカスティリャ語の違いについても、少しだけご紹介させていただきました。
カミーノの沿道は、どの町の方もとても親切ですが、アルスアは本当に特別でした。少しでもアルスアの良さをお伝えできていたら嬉しいです。
ところで、スペインでよく見るパン屋さん「Bimbo」って知っていますか?スーパーマーケットなどで、よく目にする白熊マークのパン、そうですあれです。
筆者は、スペインでパンやマフィンを買う時は、白熊が可愛いのと味も美味しいので、だいたいビンボを買っています。
アルスアで画像のような「Bimbo」のトラックを初めて見たので、ビンボファンとしては胸熱でした!見かけた時は、足が痛いのも忘れ、思わずトラックの後を追いかけそうになりました。笑
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