スペイン巡礼の道(カミーノ)で、サリアからサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの110㎞を、トータル6日間で歩いた旅行記です。最終日の6日目は、ペドゥローソ~サンティアゴの約20㎞を歩き、ゴールを目指します。
さて、巡礼の道を110㎞ひたすら歩いてゴールした時、人はどういうメンタルになるのでしょうか?そう、これはやってみた人にしか分からない境地です。果たして精神状態にどんな変化があるのか、または無いのか?
今回の記事では、筆者(現代日本人を代表するような、無宗教の人)が巡礼の道をついにゴールする様子を読むことができます。聖地サンティアゴに到着する様子とともに、「サンティアゴで巡礼者が出席できるミサ、巡礼が終わってみて初めて分かったこと」についても書いていきます。
これを読めば、わざわざ「荷物を背負いながら110㎞歩く」という苦行を行わずとも、スペインの巡礼をコンプリートした時の様子や、はたまた巡礼の道を歩くことによって得られるものがあるのかどうか、全て分かっちゃいます!早速読んでみましょう。
最終日:オ・ペドゥローソ~サンティアゴ・デ・コンポステーラ
この日も、朝7時前に出発し、画像のような朝の町を見ながら歩きます。
毎朝ドミトリーで使った自分の寝袋をたたんで、30㎝X15㎝ぐらいの袋に収納するのですが、あさイチで寝ぼけながらだと、これが難しくてですね。。毎回入らなくて焦ってました。
最終的には、「もうだめだ、寝袋が入らなかったらこのまま持って町を出るしかない」と思いながらギュウギュウ詰め込んでいました。
何かコツがあるんじゃないかと、折りたたみ方や入れる方向を変えたりして工夫しましたが、特に無いんじゃないかなと思います。今の所分かった収納のコツとしては、「絶対に入れるという強い心を持つ」ということ。
寝袋が収納できたら、出発。
最終日も快晴で、朝から気持ちの良い青空。上の画像のように、「サンティアゴはこちら」の看板が見えてくると、いよいよゴールに近づいた感じでテンションが上がります!
右手の標識にある「黄色い矢印」は、巡礼ルートを表しています。カミーノでは、こんな風に目印が設置されていて、巡礼者を正しい道に誘導してくれるので安心。
歩いていると、住宅街の通りで2匹の猫が。日向ぼっこ中かな?と思って近づいたら、何かニャーニャーしゃべっていました!模様と顔つきが似てるから、兄弟かもしれません。
もう少し歩くと、大きな門の中に大きな犬が佇んでこちらを見ています。レトリバーでしょうか。この犬は明らかに賢く、筆者がひとしきり撫でたら、終わりを察して奥に帰って行かれました。
もしかして、旅行中で犬不足となった巡礼者の相手をしてくれているのかも?と思うほどでした!
モンテ・ド・ゴソ(歓喜の丘)という町に着きました。サンティアゴまではあと5㎞。丘の上には、画像のようなモニュメントが建っていて、撮影スポットになっています。これよく見ると、「人間の手のひら」が巡礼の道を表していて、親指の先がサンティアゴに!
今回筆者が歩いた巡礼ルートは、「フランス人の道」というもっとも有名な道なのですが、実は他にも各地からサンティアゴに通じる道があるのです。
上の地図は、スペイン国内の巡礼ルートです。町の名前がたくさん書いてありますが、基本的にどこから歩き始めてもOK。
- 東西のルート「フランス人の道」
- 南北のルート「銀の道」
- 最北ルート「北の道」(右下の枠内)
地図によると、南北に走る「②銀の道」は、南部アンダルシア地方のセビリアからスタートし、サラマンカを通ってサンティアゴまで続いています。距離にしてトータル900㎞。
そういえば筆者は学生時代、アンダルシア地方に夏休みの間滞在したことがあります。もし仮に、「セビリアからサンティアゴまで歩く」とか言う人がいたら、冗談かと思って信じなかったかもしれません。
上の図は、ヨーロッパ各地からサンティアゴまでの巡礼ルートです。驚くことに、北はオスロ、東はブダペストやローマからも巡礼の道は続くのですね!
「すべての道が聖地サンティアゴに通じている」、というメッセージが伝わります。
抜けるような青空の下、画像のような大きな道に入りました。サンティアゴ市内に入ったようです!
歩きながらふと、一緒にいた韓国人女性が、「カミーノは人生と同じようなものなんじゃないか」と呟きました。「だって人生もこうやって一歩ずつ歩いていくんだから」と。
本当にその通り。筆者は右膝を痛めており、痛み止めと塗り薬は手放せず、もはや気力だけでここまで来た感じ。「そう、私みたいに足が痛くても、一歩ずつ歩いて行くしかないんだよね!」と話してました。
そんな真面目なことを言ってたら、自転車に乗ったイタリア人(多分)の集団が、「ジャポン?イエーイ!」と言いながら通り過ぎて行くので、爆笑でした。
そしてついに、聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラに到着!
画像が、サンティアゴの大聖堂です。ついに着いた!(T-T) ただちょっと都会すぎて、田舎の一本道を何日も歩いて着いた人間には驚きでクラクラしそうです。
近くに寄ってみたのが、上の画像。この大聖堂は13世紀に完成したもので、ロマネスク様式、ゴシック様式、バロック様式が混在しています。なんでも、着工から完成まで、150年もかかったそう!
通りでは、顔見知りの巡礼者に再会し、お互い「ゴールしたんだね!おめでとう」と喜び合いました。
バックパックを置いて、観光もそこそこに巡礼証明書を申請に行きます。申請所は大聖堂の近くにあり、すでに証明書を申請する人たちで長蛇の列。
その中には、巡礼中に見かけた人たちも並んでいるのが見えます。「あの人もゴールできたんだな、良かった」と並びながら思ってました。
申請所(Oficina del Peregrino)のアクセスについては以下です。
- 住所:Rúa Carretas, nº33, 15705, Santiago de Compostela, A Coruña – ESPAÑA
- 営業時間:8:00~20:00(冬季は10:00~19:00)
- 休業日:12月25日、1月1日
1時間ぐらい並んで、やっと窓口の女性のところに到達。
毎日のスタンプが押してある「クレデンシャル」を提出して、名前や住所、スタート地点、巡礼の目的などを申告します。(申請は、スペイン語または英語)
そして、巡礼証明書をゲットー!
申請所は午前中は比較的すいてるそうなので、並びたくない人は翌朝に行ってもいいかもしれません。とりあえず筆者は、早く用事を済ませてゆっくり観光したかったので、午後サンティアゴに着くなり、すぐに申請に行きました。
なお、巡礼証明書の発行費用は「寄付」でまかなわれているよう。画像のように、自分の名前入りのラテン語の証明書をもらったので、筆者はポケットにあった小銭をかき集めて寄付しました。
保管用に丸い筒(1ユーロぐらい)や、ラミネート加工のサービスもありました。大事に保管したい人は是非!
アラメダ公園での午後の夢
画像は、サンティアゴ市内にある、アラメダ公園からの大聖堂の姿です。
午後、緑がいっぱいの公園で休憩しながら、「ゴール達成したのは嬉しいけど、終わってみればあっけないものだな」と思いました。
もしかしたらカミーノの本質は、聖地サンティアゴではなく、毎日の一歩一歩にあるんじゃないかな、とか考えてました。
実は筆者は、行く前からゴールした瞬間に自分がどういう気持ちになるのかに興味があり、あまりネットで詳細を調べずにここまで来ました。自分で体験する前に情報を入れすぎると、もったいない気がしたため。
そして心の中では少し、「サンティアゴに着いたら、何かが変わるのかな?」と期待もありました。それが何なのかは分からないものの、サンティアゴは目的地であり、一つの区切りで、この6日間ひたすら到着することを考えてここまで来たからです。
でも到着してみて、自分自身は全く何も変わっていないことに気づきました。むしろカミーノが終わったことへの名残惜しさというか、喪失感の方が大きかったかも。
同じ宿に泊まっていたドイツ人女性は、ピレネー山脈から2か月ぐらいかけて歩いて来たのですが、「カミーノが終わっちゃったから、今度はサンティアゴからフィステーラまで歩く」と言っていました。
フィステーラは「地の果て」という名前の町で、サンティアゴから西に90㎞のところにあります。昔の巡礼者が、巡礼の最後にフィステーラで身に着けていた衣類を燃やして海に流したという逸話が残る場所。
他にも途中で会った巡礼者が何人も、「サンティアゴに着いた後は、フィステーラまで行って巡礼を終わる」と言ってたので、結構みんなカミーノが終わっちゃうのが名残惜しいのかもしれません。
筆者はそろそろマドリードに行って、フラメンコのライブハウスを回ってから日本行きの便に乗ろうと思っていました。皆予定は色々ですが、カミーノが終わっても、人生は続くんですね!
サンティアゴの教会での巡礼者ミサとは
翌日、巡礼者が参加するミサに出席しました。お昼ぐらいからで、所要約1時間。ミサは主にスペイン語でした。筆者は「キリスト教のミサ」に出席したのは初めてでしたが、神父さんの話がスペイン語でそのまま何割か理解でき、結構嬉しかったです!
ミサで印象的だった神父さんの言葉の一つは、「La vida es El Camino(人生はカミーノそのもの)」。
外国人にも伝わるように、一言ずつ区切ってゆっくり話されていたので、はっきり覚えています。しかも、道中に巡礼者同士で話していたことと全く同じでした。
そして「皆さんは、カミーノに選ばれた人たち。これからも周りの人と協力して、良き人生を歩んでいってください。」というような言葉に続き、「そのためにまず、いま皆さんが座っている椅子の、前後左右の巡礼者と挨拶をしましょう」と!
まさかの展開に皆ちょっとざわめきつつ、ちゃんと笑顔で両隣や前後の人たちと目を合わせ、少し言葉をかわしました。笑
神父さんのお話のあと、短いラテン語の歌を歌います。歌詞が書かれたものを手元に見ながら、お手本の後について練習タイムが何回かありました。
そして最後に、上の画像のような大きなパイプオルガンに合わせて、参加者全員で歌います。歌い終わった時は、ちょっとジーンときちゃいました!
続いて神父さんが「最近では巡礼の意味は少し変わりつつあるけど、それでも世界中から来てくれている」と話し、参加者の国の名前を1つ1つ読み上げます。日本も入っていました!
その後、寄付を求められ、箱を持った神父さんがまわってきました。筆者はポケットに入っていた1ユーロぐらいを寄付。神父さんは「グラシァス」と言っていました。みんないくら入れたんだろう。
そしてミサのメインイベントは、↑これ。えんじ色の服の神父さんが、6人がかりで何かを持ち上げています。
実は、持ち上げているものは大きな「香炉」。それを振り回すことで、中世の時代に何か月も(お風呂に入れずに)巡礼してきた人たちのニオイを和らげようということらしい!
画像のように、1人ずつひもを持って、「よいしょ!」という感じで持ち上げます。
上の画像の左端に香炉があり、白っぽいお香を出しながら、高速で右に移動しています。
上の画像は、香炉が中心部からやや右に移動している所。カメラを持ち上げている方の手のすぐ左が、高速で動く香炉です。その左側に白くぼやけたように見える部分が、飛散しているお香。
13世紀から続く歴史ある大聖堂の貴重な内装の中を、大きな香炉がぶんぶんと飛び回ります。大迫力でシュールな光景!
これは、「神父さんがちょっと方向をミスったら、「ズゴーン!」と中世の調度品にぶつかってしまうのでは」と思い、ドキドキでした。
何も起こらなくて良かった!
この時のミサ参加者たちは、画像のように全員かたずをのんで、香炉と神父さんの技術を見守ります。写真撮影OKなのが嬉しいですね。
ミサで一つ注意したいのは、大聖堂は空調が効いていなくて思った以上に寒いということ!筆者は服装を間違えてフリースとヒートテックで来てしまいましたが、5月のサンティアゴは結構寒く、小一時間寒さに震えてました。笑
小さくたためるダウンジャケットなどを、持っていけばよかったです。皆様はご注意ください。
本日の経路
最終日の6日目は、ペドゥローソ~サンティアゴの約20㎞を歩きました。途中休憩を入れても5時間ぐらいだったと思います。
まとめ
以上、スペインの巡礼の道の最終日として、「聖地サンティアゴに到達する様子、巡礼者のミサについて、そして巡礼が終わった後の境地」について書かせていただきました。
今回110㎞歩いてみて、改めて「カミーノは人生と同じで、足が痛くなっても一歩ずつ歩いて行くしかない」というのを実感しました。これは、実際に歩いてみる前には想像していなかった境地でした。だって、ゴール後はもっと素敵な気分になるのかなとか思ってたから!笑
上のマップは、出発地サリア~到着地サンティアゴまでの110㎞の道のりをまとめたもの。ちょっとマップの使い方があやしくて全部A地点になっていますが、だいたいルートが繋がっているのでOKとさせてください。笑
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。
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