スペイン巡礼の道(カミーノ)で、サリアからサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの110㎞を、女性一人で歩いた体験記事です。3日目は、パラス・デ・レイ~メリデの約12㎞。
巡礼の道では、自分の荷物(10㎏前後)を背負いながら毎日歩きます。不慣れなことをすると、知らず知らずのうちにどこかに負担がかかってくることって、ありますよね!
筆者はどうやら足を怪我したようで、右膝が通常の1.3倍ぐらいの大きさに腫れあがっていることに気づきました。さすがに自分の膝がこんな姿になったのは初めてだったので、一度病院に行ってみることに。
皆さんは旅先で病院に行ったこと、ありますか?筆者は今回が初めてです。気を付けてはいても、人生いつどこで何が起きるか分かりませんよね。
これから巡礼の道に行かれる方、スペインに旅行予定の方は、万が一の時のために、この病院体験談を読んでおいて損はありません。早速見てみましょう!
3日目:パラス・デ・レイ~メリデ
1日目と2日目までは、ミシュランの地図などで提示されている1日分のペースに従い、毎日約20㎞ペースで歩いてきました。
そして3日目に来て、次の「パラス・デ・レイ~アルスア間」が25.5㎞もあることに気づいたのです。
すでに全身痛かったので、「25㎞以上は無理」と思い、半分の距離にカットし、中間地点のメリデで一泊し、3日目は12㎞だけ歩くことにしました。
巡礼のスケジュールについて
当初、「大人がサリア~サンティアゴ間を歩くと一般的には5日間ぐらいかかる」と聞いていました。筆者は自分の体力の無さをよく知っていたので、念のためバッファを取って「5日+1日=6日間」で旅のスケジュールを組んでいました。そのため、1日到着を遅らせることは全く問題ありませんでした。
この日、巡礼者仲間に聞いてみると、半分以上の人は25km歩いてアルスアに行く様子。でも中には、のんびり行きたい人たちもいて、「アルスアは遠いから、今日はメリデまでにする」と言っていました。
もし、筆者が5日間ギリギリでスケジュールを組み、帰りの交通手段も予約してあったら、「もうバスを予約しちゃったし、とりあえず5日で着かなきゃ」と無理していたかもしれません。
サンティアゴを出る時の交通手段は、この時はまだ予約していませんでしたが、大都市間(サンティアゴ~マドリードなど)は、いくらでも交通手段があるので、結果的にこの程度のざっくりした計画でも十分だったと思います。
パラスを出発
3日目もバルでコーヒーを飲んで目を覚ましたら、朝から動物たちに見守られながら出発です。
犬、猫、牛、ロバ、豚、山羊など、カミーノの道中は動物が至る所にいるので、動物と遊びながら歩くことができ、動物好きな方は楽しめると思います。
ちなみに現時点でどれくらい足が痛いかというと、10段ぐらいの階段を上るのに、「うわぁぁぁ」とうめきながら1段1段上っているぐらいの筋肉痛具合でした。そしてそれを見た外人に「私もそんな感じ!笑」と爆笑されました。
この辺りで日本人の男の子が歩いていました。彼はピレネー山脈から1か月ぐらい歩いてきているベテラン勢。
歩きながら話していたら、「ピレネーから一緒に来た韓国人4人組とペースを合わせたいから、一日20㎞ぐらいにしてるけど、本当はもっと歩ける」と言っていました。
さらに、筆者が「足が痛くてつらい」と話すと、「僕も足はずっと痛いし、みんな常にどこかしら痛いまま歩いてるんじゃないかな?」と、すごいことを言っていました。
自分だけじゃなく、みんなも全身の痛みを抱えながら歩いているのかと思うと、「もう少し頑張ろうかな」なんて思えてきます。
1-2時間歩いていると、小さな村(というか集落のような所)を通過しました。恐らく「レボレイロ」という村でしょうか。
ここには、小さい家や建物が少しありましたが、ほとんど人の姿を見かけず、動物もいません。建物も古く、ほとんど廃墟のようにも見えます。唯一、上の画像の教会があるのみ。
筆者がこの村の周辺を歩いている時にドキドキしたのは、住人が一人もいない上に、他の巡礼者もあまり見かけなかったこと。
そのため、一瞬「どこかゴーストタウンに迷い込んだのか!?」と思うぐらいちょっと心細くなってしまいました。誰もいない森の中を歩いているよりも、生命体のいない村を歩く方が怖いんですね。笑
それにしても、商店が無いような小さな村にも、キリスト教会だけはあるんですね。考えてみればすごいことだな、とか思いながら横を通りました。
本日の目的地、メリデに到着しました!
画像は、メリデの入り口にかかっている橋で、町のシンボルになっているようです。実は、町の名前はどこにも書いてないのですが、大きい町に着いたので何となくメリデだと分かります。
上の画像は、メリデの入り口にある橋から見た景色です。
天気が良いと、もっと綺麗だっただろうなと思いますが、ガリシア地方は「グリーン・スペイン」とも呼ばれる雨と緑のエリア。仕方ないですよね。
上の画像は、更に橋を奥に進んだものです。「メリデ」と看板があるので、正しい場所に来たようです。実はさっきの「レボレイロ」を通った時からちょっと心細かったので、大きい町に来てほっとしています。笑
本日の宿は、「アルベルゲ・デ・メリデ」という公営の宿です。チェックイン開始が13時で、12時ぐらいに町に着いたので、玄関で順番待ちをして早めに宿に入りました。右膝が痛くて限界でした。
メリデで病院に行ってみた
冒頭で少し記載した通り、この時点で右膝が通常の1.3倍ぐらいに腫れていました。ちょっと今までに見たことないぐらい腫れていたのと、かなり痛かったので、病院に行ってみることにしました。
旅人の噂で、「セントロ・メディコ」という病院ならタダらしい!と聞いて、そこを目指してみます。
宿の人に行き方を聞くと、だいたい宿から歩いて10分ぐらいとのことで、地図を持たずに行ってみました。案の定、道に迷ってウロウロしていたら、巡礼者のマークのホタテ貝を付けていたためか、通りにいるおじいちゃん達に親切にしてもらい、道を教えてもらいました。
病院に着く
病院に着くと、他に4-5人ぐらいスペイン人が待っています。学生さんのような若めの患者さんが多かったです。結構本気で辛かったので、1gでも荷物を持ちたくなくて、病院にカメラは持って行きませんでした。(画像がなくてごめんなさい。)
受付で「足が痛くて診察してもらいたいけど、旅行者でスペインの保険などには入っていないが、料金はどれぐらいか?」と聞きました。受付の人は、日本で会社で働いているのか?と聞き、そうだと答えると、「じゃあ診察代は払わなくてよい」とのこと。
どういう仕組みなんだろうと思いつつ、30-40分ぐらい待合室で待った後、診察室に呼ばれました。診察室では、医師の年配男性に、スペイン語でだいたい次のようなことを伝えました。
- 日本から来ていて、カミーノの巡礼3日目である
- 右膝が痛くて、いつもより腫れていることに気づいた
- 現状かなり痛いけど、このままサンティアゴまで歩いて大丈夫か?
医師と看護師さんに右膝を見せると、左膝と見比べて、「あー、歩きすぎたのね」みたいな反応でした。「サンティアゴまであと50㎞ぐらいあるけど、薬塗って歩けば大丈夫じゃない?」というようなことを言ってもらい、少し元気が出ました。
ここで、恐らく保険提出用だと思われますが、ガリシア語で書かれた書類に記載する必要がある、と病院スタッフに言われ、紙を手渡されました。書類の内容は、名前や連絡先、病状などついてでしたが、項目が全てガリシア語で書かれていたため、この書類記入は結構頭を使い、大変だった記憶があります。
筆者は昔スペイン語を勉強していたので、簡単な読み書きや会話であればOKです。ただ、スペインは地方によって言語が分かれていて、カスティリャ地方、カタルーニャ地方、バスク地方など、全部その地方独自の言語が使われています。
そして日本の学校で教えている「標準スペイン語」は、実はカスティリャ地方の「カスティリャ語」なのです。という訳で、現地の人が使う言葉である「ガリシア語」が、いまいちぴんと来なくて、結構厳しいものがありました。
書類を書くにあたり、カスティリャ語を基準にして読むと、全然違うのでドキドキしましたが、一度カスティリャ語に脳内変換し、後はカンで書きました。
ガリシア語の書類で苦戦する
ガリシア語を読んでみて思ったのは、まず前置詞と冠詞がちょっと違うな?ということでした。地理的にも近いせいか、若干ポルトガル語が混じっているように感じたことがありました。
例えば以下です。
- カスティリャ語で前置詞は「De」と「Del」(英語でいう「Of」)
- 一方、ガリシア語では「Do」や「o」を目にした
- 細かい使用方法がよく分からないが、恐らく前置詞と思われる
筆者の語学レベルで分かったのは上記ぐらいでした。書類はA4びっしり書かれているので、ガリシア語の前置詞や冠詞が分かっていないと、意味不明な文もあります。
また、ガリシア語の単語については、読んでいる限り、何となく以下のようなポイントがあると分かりました。
- 「緊急」=カスティリャ語「Emergencia」=ガリシア語「Emerxencia」
- 「出口」=カスティリャ語「Salida」=ガリシア語「Saída」
- 「旅」=カスティリャ語「Viaje」=ガリシア語「Viaxe」
辞書無しで分かったのはこれぐらいでした。
ガリシア語では「G→X」、「J→X」になる場合がある、と覚えておけば、音から変換できますね。
診察代について
診察室で、医師とスタッフに治療費についても聞いてみました。
「スペインで保険に入っていなくても、日本で会社で働いていて、社会保険に入っているなら、会社に請求するから患者は払わなくてよい」と、病院の人に言われました。
ただ、筆者の勤めていた会社は生粋のブラック企業で、スペインの病院から請求書が届いたら、えらい大騒ぎになり、後々までネチネチ言われることは明白。
後でこの件に対して自分に降りかかる時間的・精神的負担を考えると、ここで実費で払った方が安いのでは、と一瞬で考え、「ちょっと会社には言えないから、自分で払います」と言いました。
医師とスタッフはびっくりしていて、「えっ何言ってんの?会社の保険証出せば、患者は払わなくていいよ、そういうシステムだから」と言われました。
(無料って何だろう?日本では患者は3割負担だよな…)と考えていたら、「スペインでは無料だよ!」とのこと。
ここで筆者は、自分の認識が間違っていたことに気づきました。
- 筆者がスペインの医療事情を全く知らずに病院に来てしまったこと
- 病院の方が認識している医療制度は、恐らくスペイン独自のもので、日本の医療制度とは異なること
- ゆえに恐らく患者負担がゼロにはならないが、料金がいくらなのかこの場では分からない、10割かもしれない
- いずれにせよ、ここで保険証を使うと日本に帰った後で会社とトラブルになりそう(あくまで予想)
ということを思い巡らした結果、それらをスペイン語で説明するのは筆者にはハードルが高かったので、「すみません、本当はそんなに痛くないから大丈夫です」と言いました。
医師は「えっ帰るの!?」と驚いたように言い、その後「はい」と言った筆者の本気の様子を見て、少しため息をつきました。
そして他のスタッフと相談し、何と、そのまま処方箋を書いてくれたのです。
信じられないことに、医師の方は「診察代は無料でいいよ、ブエン・カミーノ(よい巡礼を!)」と言ってくれました。
巡礼者とはいえ、もはや、ガリシアに足を向けては眠れません。あの時の医師の方、本当にありがとうございました。このご恩は忘れません。(T-T)
ここまで皆さんにお世話になっていると、「もう何日かかってもいいから、這ってでもサンティアゴまでコンプリートしたい」という気持ちになってきます。
薬を買いに行く
処方箋を書いてくださったので、それを持って薬局に薬を買いに行きました。通りで目に付いた薬局(ファルマシア)に入ると、すぐに処方してくれました。値段は4ユーロぐらいだったと思います。
薬局の女性もとても親切で、「歩きすぎたのねーお大事にね!」というような感じのことを言ってくれました。
薬は透明なジェル状の塗り薬で、塗るとメンソールのような香りでスッとする感じでした。炎症にはめっちゃ効いたので、毎日塗っていました。
今反省するのは、最初から薬局に相談に行けばよかったということです。
薬局で、「足が腫れて痛いので薬ください」ぐらいは言えたのではないかと。。読者の方は、まず薬局に相談してみることをお勧めします。
本日の経路
3日目は、パラス・デ・レイ~メリデの約12㎞を歩きました。
まとめ
以上、スペイン巡礼3日目、パラス・デ・レイ~メリデの様子と、病院に行ってみた体験談でした。ガリシアで本当に色んな人にお世話になっているので、「ここまで迷惑かけたら絶対にゴールしよう」という気分でした。
また、読者の方は旅行中に何か怪我などが起きたら、筆者のようにまず病院に行ったりせず、薬局に相談してみてくださいね!そして筆者は旅を強行しましたが、皆さんはくれぐれも無理しないでください。
ところでメリデでは、宿で一緒だった旅行者たち8人ぐらいで、ガリシア名物のタコ(プルポ・ガジェーゴ)を食べに行きました。
こちらの画像がプルポ・ガジェーゴ。タコを茹でて、オリーブオイルと調味料で味付けしてあります。シンプルなお料理で、素材の味というかタコを味わう感じでした。上に刺さっている「つまようじ」でいただきました!
タコなどをつまみながら、皆で「何でカミーノに来たの?」とか、「普段は仕事何してるの?」といった話を順番にしていました。学生さんや、教職をされている方など、様々でした。日本人もいましたが、日本で働いていると休暇が取れないので、仕事辞めて来ちゃった!という方が多かったです。
この日も寒かったので、温かいお料理はありがたかったです。ただ、一日中歩いている人たちが8人もいたので、小皿のタコは一瞬で無くなりました。笑
このようなタコ料理のお店は「プルぺリア」と呼ばれ、付近にはたくさんありました。ガリシアに行った際は、一度タコを試してみてはいかがでしょうか。
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