就職・転職を考えている方には、「航空業界って、どんなタイプの人がいるの?」とか、「実際に働いている人たちはどんな雰囲気?」と思ったことがある方、いらっしゃるのではないでしょうか。
職場での「人間関係」って、業務内容やお給料と同じぐらい、重要ですよね!でも募集要項や面接からは、なかなかそこまで分からないもの。
今回は、航空業界で長年働いていた筆者が、業界に「よくいるタイプの人」を、4パターンに分けて考察してみました。
これを見れば、航空業界によくいる人、例えば「クレーム対応の達人、体育会系な人、航空機にものすごく詳しい人、美しすぎる人」など、業界の人の傾向や特徴が分かっちゃいます。早速読んでみましょう!
クレーム対応の達人
まず最初は、クレーム対応の達人。どんなにハードなクレームも、「この人が対応するとあっさり解決する!」というマジシャンのような人が時々います。もちろん、日本語・英語どちらもこなしちゃいます。
一体、どうやって対応しているのでしょうか?ちょっと分析してみましょう。筆者が達人の対応を見ていて、特に「すごい」と思った点は、おおむね下記のような部分でした。
- 怒っているお客様に対して、まず名前を名乗り自己紹介
- 「本日はご搭乗いただきありがとうございます!」と握手を求める
- お客様の話を聞く
まず、他のスタッフからクレーム対応を引き継ぐ場合が多いので、①で自己紹介しています。名前と役職を名乗り、②飛行機に乗ってくれたことのお礼を言い、握手する。
お客様としては、途中から登場した別のスタッフに、いきなりお礼を言われ、握手をしてしまうと、あまり怒り続けることができないようでした。
もしかしたら、握手というボディタッチを通して、心理的に距離が近くなる効果もあるのかも。この時点で、すでに、予想しなかった展開にびっくりされて、怒りを忘れたお客様もいました。
自分がスタッフとして対応していて、対応がまずくてお客様を怒らせちゃった時って、「しまった」と反省してることがほとんど。でも一人のお客様にだけ時間をかけすぎると、今度は全体の進行が遅れてしまうことに。
そこでやむを得ず、現場の責任者に対応してもらい、そのお客様の対応を引き継いで、自分は別のお客様の対応に移ります。これは、一見対応を押し付けてるようにも見えますが、本当はスムーズな流れだったりします。
とはいえ、やっぱり「押し付けてる罪悪感」を感じるもの。そこで責任者が一瞬で解決してくれると、感謝しかありませんでした。こういう上手な対応を間近で見ることができると、勉強になりますね。
クレーム対応の達人の手法を、実際にやってみた
このクレーム対応の達人の手法を、実際にやってみたことがあります。
ある時、空港に大雪が降り続き、飛行機が全く飛べない日がありました。横殴りの吹雪が半日ぐらい続いたので、除雪車がフル稼働しても追いつかないぐらいの状況。搭載燃料に限りがある到着便を優先的に着陸させ、出発便はおおむね待機していました。
そんな時、自分の担当便のお客様が「なぜ飛行機が出ないのか、説明がない」とご立腹され、そのお客様がマイレージの上級会員で、ラウンジに滞在されていたため、筆者がラウンジまで説明しに行くことになりました。
その時点で吹雪が続いていて、昼間なのに周辺は真っ暗。除雪車も足りず、飛行機が飛ぶ見込みが全く立ちません。お客様にも「ご覧の通り大雪で、除雪車の順番待ちです。飛ばせるようにがんばりますので、お待ちください」ぐらいしか言えない状況。
そんな中で、ご立腹中の上級会員様(日本人男性)の待つラウンジに、筆者が単独で乗り込んで行っても、勝算がありません。なぜなら、上級会員の日本人男性は、おおむね「イライラしていて怖い人」が多いのです。さらに当時は、入社して1年ちょっとぐらいの新人時代。
「あかん・・・このままラウンジに行ったら、生きて戻ってこれない」((((;゚Д゚))))
どう考えても、正攻法で行っても乗り切れる状況ではない、と判断。普通にラウンジに行って対応した場合、飛行機が飛ばなくてイライラした上級会員様に、大声で罵倒される可能性が高いです。対面したら最後、何を言われるのか分かりません。
そこで、ラウンジに向かいながら「そうだ、クレームの達人なら、こんな時どうするか?」と想像してみました。そして苦肉の策として、例の必殺技をやってみることにしました。
- 怒っているお客様に対して、まず名前を名乗り自己紹介
- 「本日はご搭乗いただきありがとうございます!」と握手を求める
- お客様の話を聞く
まずはラウンジでお客様の座席まで行って、「A様、こんにちは!筆者と申します!本日はご搭乗いただきありがとうございます!」と、お客様の名前を呼んでご挨拶。当時、何の役職も無かったので、とりあえず自分の名前を名乗りました。
日本人のお客様だったので、②の握手は省略。相手が外国人なら、自己紹介の一環で「握手」は有効だと思います。
その後、お客様の斜め後ろぐらいにひざまづいて、ひと通り話を聞きました。お客様の正面に立ってしまうと、圧迫感を与えます。また、頭の位置をお客様よりも下げることで、敬っていることを表現。
話を聞いた結果、どうやら、あまりラウンジ内でのアナウンスも無くて、「どうなってるのか!?」と不安になったようでした。
とはいえ、外の天気が吹雪いているので、飛行機が飛ぶためには除雪車が必要、その順番待ちなどで時間がかかっていることを説明し、「飛ばせるようにがんばります、またラウンジにもアップデートします!」と説明しました。
お客様は、「わざわざ自分に説明するために、スタッフがラウンジまで来た」という特別扱い感がお気に召したのか、こちらの説明が上手くできたのかは分かりませんが、納得されたようで、それ以上は突っ込まれませんでした。
ということで、実際にやってみた結果、「クレームの達人の手法は、効果あり」と思いました。最初に自己紹介などをして、自分のペースに持ち込むことで、その後の説明を勢いよく押し切れる流れができました。
接客業の方、困った時には一度お試しください!
ザ・体育会系
航空業界は、体育会系なところがあります。上下関係は厳しく、チームプレーが求められます。先輩の言うことをきっちり聞いて、後輩にも受け継ぐことができる体育会系の人も多い。
たとえ体育会系出身でなくても、航空業界にいるうちに体育会系っぽい所作が身に付きますので、ご安心ください!笑
学生時代にチームプレーをあまりしてこなかった筆者(元テニス部)は、ある時、仲良しの体育会系(元バスケ部)の先輩に、「チームプレーとは何か?」と聞いてみたことがありました。
チームプレーとは
「チームプレーとは?」に対する先輩の回答は、次のようなものでした。
- 周りが「してほしいと思っていること」をする
- そのために、他の人の動きをよく見るのだよ
つまり、「自分がどうしたいかではなく、周りの人がしてほしいことを考えて、それを実行するのがチームプレーだ」と。なるほど!
体育会系のもう一つのメリット?
この先輩は、仕事もできる人で、加えてチームプレーを徹底する体育会系だったためか、チームのほぼ全員から愛されていました。そしてチーム全員から愛された結果、少々髪の毛が茶色くても怒られないキャラを確立していました!
これは、結構すごいことです。笑
航空会社の制服を着用する際、「万人から好感を持ってもらえる身だしなみ」を徹底します。例えば「派手なネイルはしない」とか、「髪の毛先が見えないよう、シニヨンにする」のような規定が、1個1個存在します。
禁止事項の中には、髪のカラーリングも含まれていて、染髪は禁止。今どきの女性であれば、ブラウンに染める人もいるので、大体の人は「髪が茶色い」と指摘され、黒く染めるように促されます。
基本的には、会社のルールに例外はないはず、なんですが、やっぱり人が人をジャッジする以上、点数の付け方は一定ではありません。何らかの主観が入ります。
ということで、この先輩の場合は、かなり茶髪が進んで明るいカラーでしたが、張り切って(鬼の首を取ったように)注意する人はいませんでした。体育会系・愛されキャラのためか、「まあ、こいつはいいか」みたいな感じで、何となく見逃されてた様子。
こんなこともあるのですね!
航空機にものすごく詳しい人
次に、航空機にやたら詳しい人も一定の割合でいます。いわゆる、航空機オタクの人です。飛行機は、言ってみれば「大きな機械の塊が空を飛んでいる」ような感じなので、機械系の話にピンとくる人は、仕事中とても楽しそうでした。
筆者は超文系で、機械は全くピンときませんが、ある時「ディスパッチ」という専門的な仕事をすることになりました。航空機が飛ぶ仕組みを理解した上で、運航乗務員(パイロット)にアドバイスをしたり、飛行計画を立てたりする仕事です。
ところが、仕事の勉強で運航系の本を読んでみても、日本語で書いてあるはずなのに、全く意味が分からないのです。何回か読みましたが、全く意味不明!笑
例えば、「ILS(計器着陸)」に関する勉強をするとします。「ILS」は、一般に国内の空港で使われている精密着陸方式。これが分からないと、乗務員さんにアドバイスなど不可能です。
そこで勉強のためにテキストを開くと、「ILS」についてこのような説明が現れます。
- ILSとは、最終進入中の航空機に滑走路に対する正確な進入経路を示す施設である
- 地上施設は、基本的にローカライザー(LOC)およびグライドスロープ(GS)の2つの指向性電波を発射する送信装置と進入コース上に設置されているマーカービーコンによって構成されている
(出典:AIM-J 発行:公益社団法人日本航空機操縦士協会)
筆者「・・・( ゚Д゚)ポカーン」
ひとつ断っておきますが、この本は、大変便利でエクセレントな本なのです。ただ、すでに分かっているプロ向けの仕様で、素人が読んでも分かるものではない部分も多い。
あらゆる事象の説明が、こんな感じで続いていたので、「ポカーン」としつつも、とりあえず日々の業務をこなすことに集中していました。
航空機に詳しい人による、スーパー白熱授業
そんな時、ある先輩の航法の講義を受けることになりました。その人は、小型機のライセンスも持つという経歴の持ち主。
筆者のように、機械系に全くピンときてない文系人間にも、航空機が飛ぶ理論を一発で落とし込む、スーパー白熱授業を実施してくれたのです。
例えば、先ほど出てきた「ILS」についての、先輩の説明はこんな感じ。
- 先輩「空間中のある1点を決めるには、3つの地点(X, Y, Z)が確定すればいいよね」
- 筆者「ハイ」
- 先輩「その3つのポイントを、それぞれローカライザー、グライドスロープ、マーカービーコンなどを使用して、航空機までの距離を取る。これで空間中のある1点は決まる。こうして1点を決めたまま、降りてくる。これが精密進入、ILS。」
- 筆者「・・・一発で理解しました」( ゚Д゚)
この先輩の話を聞いたら、どんなに機械音痴の人間でも、「ILS」という精密進入の概念を理解してしまうのです。感謝しかありません。
そして、分かりやすさにびっくりする体験でもありました。こんなスーパー授業を聞けたのは、本当にラッキーでした。
美しすぎる人
そして、「美しすぎる人」。航空業界は、なぜか美しい人が多く、中には同性が見ても「モデルですか!?」とぼーっとしちゃうような美女も。美しい先輩は、だいたい性格も良くて、仕事もできる人が多かったです(筆者調べ)。
ある美しい先輩Bさんと同じチームになった時、Bさんの使っている化粧品や愛用のブランド名などが、即効クチコミで回ってきたことがありました。聞くところによると、化粧品はデパートの一流ブランドで、一式そろえると3万円ぐらいはします。
でも「あのB先輩が使ってる化粧品」と聞くと、皆顔を見合わせて「うん、やるしかない」となり、同じ化粧品ブランドを一気に購入し、真似して使っちゃったことも。(え、効果?聞かないでー!笑)
そのB先輩を見ていて分かったのは、「美への探求が半端ない」ということ。
- 主食はお肉(タンパク質)
- 常に最新のダイエット情報を知っている
- 制服のポケットには、リップグロスを常備
- 限定コフレが出たら、有給休暇とってデパートに買いに行く
生まれつき美人なのに、食べ物はタンパク質をメインに摂取し、ダイエット情報も詳しいなど、外見にとても気を遣っているのが分かります。一日中お客様と話す仕事なので、化粧はすぐ取れますが、B先輩はポケットにリップグロスを常備し、塗りなおすという徹底ぶり。
そして特筆すべきは、④限定コフレのために有給休暇を取る、という部分。なかなか取りたくても取りづらい有給休暇を、限定コフレのために使うというのは、筆者にはできない選択でした!
いやー、こういった日々の努力が、大きな違いを生むんだなと実感。
「女性が多い職場ってどんな感じ?」と思った方は、別の記事、職場で「女の世界」を生き抜くためには?にて詳しく書いていますので、こちらも読んでみてください!
まとめ
以上、航空業界に「よくいる人」を、「クレーム対応の達人、体育会系な人、航空機にものすごく詳しい人、美しすぎる人」の4パターンに分けて、考察してみました。
実は航空業界は、「一度離れてもまた戻ってくる」と言われています。一回辞めた人が、また戻ってくる確率が高い、と言われてるんです。
また戻ってくる理由は、飛行機の魅力、福利厚生、給料、役職?など、人それぞれかもしれませんが、「チームプレーの魅力」もあるんじゃないかな、と思ってます。個性的な同僚と、色々ありながらも良いチームプレーができる経験は、なかなか他の業種では味わえなかったりするもの。
こんな航空業界、「ちょっと楽しそうかも」と思っていただけたら、嬉しいです!ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。
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