南米大陸のパタゴニアにあるロス・グラシアレス国立公園には、その神秘的な美しさで有名な山があります。標高3405mの険しい岩峰群、フィッツ・ロイ山です。アウトドアメーカー「パタゴニア」のロゴにもなっている、あの山です!
パタゴニアに来たら、一度はフィッツ・ロイを見に行ってみたいですよね!でもフィッツ・ロイは別名「煙の山」とも呼ばれるほど、雲がかっていることが多い山。たまにしか姿を見せないのです。
人生でパタゴニアを訪れる機会は、そう何度もない(はず)、せっかくならフィッツ・ロイを見るための作戦を練ってから行きませんか?
筆者は、パタゴニアのカラファテから日帰りで、山麓の町チャルテンに行き、そこからチャルテン周辺をトレッキングしました。
実体験に基づくチャルテン周辺の旅の秘訣を、次の3つのポイントで書いていきます。
- カラファテ~チャルテンの移動
- トレッキングの準備と実際の体験
- その他注意事項
この情報を頭に入れておけば、チャルテンでの効率的な旅の計画ができちゃいますね!
カラファテからチャルテンへの移動
パタゴニア地方の観光の起点となる町「エル・カラファテ」から、フィッツ・ロイのふもとの町である「エル・チャルテン」までは、バスで約4時間の距離です。
筆者は途中で知り合った日本人2人と一緒に、朝8時のバスに乗るため、7時半頃宿を出てバスターミナルに向かいました。
チケットを購入
この時、バスターミナルの窓口でチケットを買おうとしたら、「顔写真付きの身分証明書」の提示を求められました。
その時パスポートはさすがに持ち歩いていなかったので、少し考えて、会社のIDカード(日英表記)を提示しました。
(日本の運転免許証だと漢字表記しかなく、もし「身分証明書としての正当性をスペイン語で説明しろ」と言われたら、説明が面倒だなと思ったため。)
幸い、窓口の人が見て納得してくれたようで、会社のIDカードで無事チケットを購入できました。今後行かれる方は、パスポートを携帯していると良いかもしれません。
なお、チケット金額は片道で約2300円でした。
バスで移動
画像は、バスの中から見た道中の景色です。
「山、川、雲」というシンプルな風景でも、パタゴニアの澄んだ空気や光と風の要素が加わることで、何だか神々しい雰囲気になります。
あまりに綺麗なので、道中ずっと外の景色を見ていましたが全く飽きませんでした。
なお、運転席からみた風景は、こんな感じ。ひたすら一本道が続きます。この道は「ルート40」と呼ばれ、アメリカでいう「ルート66」みたいな感じらしい。
ちなみに「ルート40」はスペイン語では、「Ruta 40(ルタ・クアレンタ)」と読みます。最初の「ルタ」は、巻き舌ですよ!
途中の町「ラ・レオナ」にて休憩タイム
途中、ラ・レオナ(La Leona)という小さい町で、バスは一旦休憩停車しました。レオナは、カラファテとチャルテン間の中間地点にある町で、ビエドマ湖の南東にあります。
小さいながらホテルやレストランもあり、お手洗いに行ったり、写真を撮ったり、お店で飲みものを買っている人もいました。
画像はレオナにあったトーテムポールで、世界の主要都市までの距離が書かれたもの。
最も遠い東京が一番上にあり、「東京まで2万1千㎞」。そしてその次に遠い都市は「エルサレム1万4千㎞」です。笑
これを見ると各地からの旅行者は、改めて「はるばる来たな」と実感できて面白いですね。
筆者は「こんな遠くまで来ちゃったぜ!もう戻らないからな!」というテンションになりました。
こちらの画像は、レオナで休憩中に撮影したものです。
太陽の光が強くて、周辺にあるのは「山、川、雲」で遮るものが無く、めちゃめちゃ眩しかったです。どこを向いてもフォトジェニック。
荷物は増えるけど、一眼レフを持って行って良かったです。
パタゴニアー!
強い朝日をあびて、犬もまぶしそうな様子。
犬の他に、鶏も飼われていました。もしかしたら、たまごを産む雌鶏かもしれません。
上の画像のように、川の向こうまでずっと見通すことができて、大自然がとても美しいです。
水色と白の国旗は、アルゼンチンの国旗ですね。
なお筆者が乗せていただいたのは、こちらの「CALTUR」さんの観光バスでした!
外側に、フィッツ・ロイの絵が描いてあります。
街中のバスと比べて窓が広く、外の景色を楽しめる構造。バスはとてもきれいに整備してあり、ガラス越しに写真を撮ってもきれいに撮れましたよ。
観光案内所で一旦下車する
バスは途中で観光案内所に止まり、乗客である旅行者たちは一同で集まります。
ここでは係の人がスペイン語で簡単に説明をしてくれ、フィッツ・ロイ周辺についてブリーフィングを受けました。
観光案内所の方が数名で順番に、山について話をしています。この時に一緒にいた旅行者は、欧米やアルゼンチン国内の人が多く、だいたい20名前後。日本人・アジア人は、筆者たち3名のみでした。
ちなみに筆者の語学力ですが、昔スペイン語を勉強していたことがあり、旅行程度であれば困らないレベルです。でもこちらでのお話は用語が難しく、さらっと説明を聞いただけではよく分かりませんでした!
こちらの図もあわせて勉強してみました。まず地質学的には、フィッツ・ロイは地球の深部からの「roca ignea/火成岩」で出来ています。約1億年前、大きなプレートが衝突した時に、マグマがプレートの間を抜け出て、岩の間で固まります。その後長い年月をかけて、風や雪や氷によって削られ、現在の直立した岩の形に削られたそうです。
またフィッツ・ロイは一年中雲に覆われていることが多いため、先住民の人たちはてっきり火山だと思っていたという話が残っています。
準備のポイント
それでは、チャルテンの町からフィッツ・ロイのトレッキングについて、事前準備から実際の体験までをまとめます。
確認ポイント①スケジュール
日程はかなり重要です。
フィッツ・ロイは、天気が良ければ非常に美しい姿を見ることができますが、天気が悪くて全く見えない日が続くこともよくあります。
「ここまで来たら絶対に見たい」という方は、晴れていることが条件なため、2、3日はチャルテンに滞在する予定でスケジュールを組まれることをお勧めします。
筆者はチャルテンに1日しかいられなかったため、天気が悪くても突撃するしかありませんでした。。皆様は余裕を持ったプランをお勧めします。
確認ポイント②装備
それぞれの登山プランによりますが、筆者は1時間程度のトレッキングで来たので、スニーカー、傘、水、レインコート、バックパック、ジーパンという装備でした。
後述しますが、日帰りでもスニーカーではなくトレッキング・シューズをお勧めします。
チャルテンまで来たものの、あまりきちんとした登山装備をしてこなかったという方は、町中にも登山用品店があるので、現地で調達することも可能です。
確認ポイント③個人それともツアー
登山に不慣れな方や、個人で山に入るのに不安があるという方は、現地の旅行会社が主催するツアーを検討されてはいかがでしょうか。
半日程度のトレッキング・ツアーから、数日間のキャンプ・ツアー、氷河ツアーなど様々な企画がありますので、予定に合わせて利用することが可能です。
旅行会社オフィスやホテルなどから申し込めます。
確認ポイント④気象情報
天気を自分で見たい人は、mountain-forecast.comというサイトで、フィッツ・ロイ周辺の詳しい気象情報を見ることができます。英語ですが、地表の天気図、今後1週間の予報などもあり。本格的に山に入る方は役に立ちそうです。
ちなみにスペイン語が分かる人は、通りを歩いている地元の人に聞けば、快く教えてくれます。
展望ルートを日帰りトレッキング
さて、準備が終わったら、トレッキング開始です。
筆者がバスでチャルテンのふもとに着くと、冷たい雨が降ってきました。「ひー!(´;ω;`)」って感じでしたが、せっかくなので山まで行ってみることに。
道中で会った旅人に、「1-2時間のトレッキングで、フィッツ・ロイの近くまで行けるらしい」と聞いて、地元のおじさんに「日帰りでも行ける展望ルート」を教えてもらいました。
おじさんには「今日は天気が悪いから、見れないかもよ」と言われましたが、せっかくなので近くまで行きたいのです!と相談しました。
すると、おじさんが次のような場所「Mirador(展望台)」を教えてくれました。
ルートがGoogleマップに描けなかったため、手書きの地図で恐縮です。
赤色の導線が、現地で教えてもらったルートで、★がミラドール(展望ポイント)です。チャルテンの町から山までは、メインストリートをほぼ一本道なので、迷うことはないかと思います。
道中、我々以外にほとんど観光客はいませんでした。天気が悪いのでみんなホテルで休息しているのかもしれません。
山に向かうのは我々だけで若干心細いですが、「山の天気は変わりやすい」と言いますので、もしかしたら見れるかも?というマインドで向かいます。
フィッツ・ロイの入り口にて
画像は、山の入り口付近から、チャルテンの町を振り返った景色です。メインストリートが1本あり、周りにお店や家があります。左手に見えるのが「ラス・ブエルタス川」だと思われます。
雨でトレッキング道が湿っており、筆者は10回ぐらい滑って転び、結構泥だらけになりました。というのも、トレッキング・シューズを履いておりませんでした。。
実は、荷物を極力減らすために、スニーカーでパタゴニアまで来てしまったのです。
トレッキングにお越しになる方は、しっかりとした山用の靴を準備されることをお勧めします。
展望台にて
画像、★印のミラドール(展望ポイント)に来ました。看板では「フィッツ・ロイ」が見えるはずなのですが、やはり天気が悪く、全く見えません!笑
画像はトレッキングルートです。それほど険しい坂や階段もなく、比較的マイルドなのですが、寒くて風は強くて、鼻水が止まりませんでした。
道中、すれ違う人はほとんどいません。そういえば動物や生き物もほとんど見なかったです。苔類と紅葉と岩が続きます。
もう少し道なりに歩きます。画像の奥の方に、雪が積もった山がフィッツ・ロイがうっすらと見えています。やはり天気が回復しないです。
それにしても、紅葉がきれいですね。
カプリ湖にて
こちらは多分、「カプリ湖(Lago Capri)」です。
湖と山と紅葉が美しいですが、やはり雨が降っています。雪じゃないだけ感謝しつつ、友人と「天気も回復しないし、この辺りでそろそろ諦めようか、寒いし、、」と相談し、戻ることになりました。
前日に、パタゴニアで人生初の氷河トレッキングをしたばかりだったため、下山する頃にはさすがに足がガクガクでした。笑
チャルテンの町に帰投
帰りも雨でしっとりした山道を時々転びつつ下山し、チャルテンの町に戻ってきます。
画像は、チャルテンの町にある「ようこそチャルテンへ」の看板。
その奥に、うっすらとフィッツ・ロイが見えています。。!
この後、カラファテ行きのバスを待ちながら、「もしかしたら晴れるかも?」としばらく粘りましたが、これ以上は晴れず。
画像は、カラファテに帰るバスの中で撮った山です。天気はここに来て、晴れてきたみたいですね。笑
夕日の光で、雲がほんのり赤く染まっています。
そして、雲にはところどころ影がかかっていて、陰影が濃く出ています。
何てことはない山の風景ですが、「パタゴニアでは何故こんなに綺麗なのか」と思い、ずっと外を見ていました。夕暮れの中で、絶妙に美しい景色が続きます。
フィッツ・ロイの日帰りトレッキング・レポートは以上となります。
結局、筆者は晴れたフィッツ・ロイの写真は撮れませんでしたが、バスの中で一瞬拝むことができました。
晴れたフィッツ・ロイを見れた方は、本当にラッキーだと思います!(正直あと1日あれば晴れたかもしれない。。笑)
今後行かれる方、スケジュールに余裕をもって行かれることをお勧めします。
日本人が注意したいこと:人種差別
中南米は比較的親日の方が多く、旅行中もフレンドリーに接してくれる現地の方が多いのですが、アルゼンチンのパタゴニア地方においては、筆者は日本人が旅行しづらいと思う事象に何回か遭遇しました。
例①フィッツ・ロイの観光案内所にて
例えば、フィッツ・ロイの観光案内所でこんなことがありました。
フィッツ・ロイ山の説明を一通り聞いた後、スタッフが参加者一人一人に、山周辺の地図を手渡し始めました。欧米人の旅行者から、一枚ずつ配布しています。
そして、地図がまだたくさん残っているのに、「あなたたちには地図を渡さない」と主張して、我々にだけ地図をくれない女性スタッフがいたのです。
筆者はそのスタッフの言動が理解できなかったため、「なぜ我々にだけくれないんですか?今日は一日中天気が悪く冷たい雨で、我々は土地勘がありません。地図無しで山に入って迷ったらどうするつもりですか?地図をください。」とスペイン語で強めにまくし立てた所、しぶしぶ地図をグループに1枚だけくれました。
すぐ近くで、アルゼンチン人の男性スタッフも話を聞いていましたが、残念ながら無言でこちらを見ているだけ。アルゼンチンではよくあるのかもしれませんが、筆者はこういう体験は初めてでした。
対策として、不当な扱いに対しては、ちゃんと主張しましょう。こういう場合は言語が少々つたなくても迫力で伝わります。
とっさに外国語が浮かばなければ、最悪日本語でもよいので、本気で主張することが大事です。
ただ、そういった方はほんの一部で、分け隔て無い素敵な方がほとんどです。フレンドリーな人もたくさんいますので、気にせずどんどん外に出た方がお得で楽しいです!
例②カラファテの町中にて
また、こんなこともありました。
チャルテン観光の起点となるカラファテの町で、アイスクリーム店に日本人何人かで入って、「どれにしようか」と選んでいた所、店員さんがスペイン語で、日本人の悪口を言い始めたのです。
- 店員A「日本人て、いつも見てるだけで買わないよね」
- 店員B「そうそう、いつもこんな感じよね」(と言って、我々がアイスクリームを見ている真似をする)
ちょっと、小学生みたいな言動だったのでびっくりしちゃいました。多分、筆者がスペイン語を理解していることを予想すらしていないのでしょう。
そこで、超笑顔でスペイン語で「こんにちは。この味とこの味をください!」と話しかけてみたところ、2人とも目を丸くして驚きつつ、無言で気まずそうにアイスを作ってくれました。笑
恐らく、「何を言ってもアジア人には通じていない」という軽い気持ちで話していたのだとは思いますが、ちょっと残念ですよね。
アルゼンチンでこんなことが何回か続いたので、「アルゼンチンは、アジア人への偏見が大きい地域なのかな」という印象になっちゃいました。もしかしたら、偶然かもしれませんが。
なお、他のラテンアメリカの地域(ペルー、ボリビア、キューバ、メキシコ、ウルグアイなど)では、こういう差別的な言動をされたことはありません。皆さんとても親切でした。
まとめ
以上、カラファテからチャルテンへの移動、フィッツ・ロイ周辺の日帰りトレッキングについて、実体験を元に書かせていただきました。天気は重要ですので、皆様は抜かりなくプランニングしてくださいね。読者の方のパタゴニアの旅のお役に立てれば嬉しいです。
余談ですが楽しい出会いもありました。チャルテンで泥まみれで下山した後、暖を取るために登山グッズのお店に入ったところ、映画撮影チームに遭遇したのです。
「映画撮ってるの?すごいね!」とかスタッフとおしゃべりしていたら、「登山の映画撮ってるんだよ!君もエキストラで出る?」と言われて、「いいの?やるやる!」と参加させてもらいました。
筆者は、スペイン語でセリフをひとこと貰いました。
「Queria un pantalon para la lluvia(雨用のズボンを下さい)」
泥まみれのジーンズを履いて全身びしょ濡れの筆者に、何ともぴったりなセリフです。人生初の映画エキストラが、こんな泥まみれとは!
ディレクターと思われるお兄やんが、色々と指示を出してくれて、3回ぐらい撮りました。多分カットされてるだろうけど。。笑
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。
それではまた!
コメント