キューバの小学校って、どんな感じなのかな?と思ったので、キューバの古都・トリニダーで小学校にお邪魔させていただきました。
この記事を書いている人は、何年か前にキューバに旅行したことがある人。スペイン語話者なので、現地の人とのコミュニケーションができ、スペイン語の資料も理解できます。
これを読めば、次のことが分かります。
- キューバの小学校では、どんな教室で勉強してるのか
- 時間割ってどんなのか
- どんな歌を歌っているのか
早速読んでみましょう!
トリニダーの小学校
キューバの古都・トリニダーのマヨール広場(Plaza Mayor)をブラブラしていたら、偶然、小学校を発見しました。外観は、一見小学校とは分からないぐらいの小ぢんまりした建物。(外観写真を撮り忘れました、ごめんなさい)
小学校は小さな通りに面しています。時間帯によっては子供たちが集まって、「わいわいがやがや」としている様子。
このときは放課後だったので、すでに子供たちの姿はもうありませんが、中にスタッフの方が数名残ってます。
「キューバの小学校ってどんな感じなんだろう、日本とどう違うんだろう?」という単純な好奇心から、少し見学させていただきました。
スタッフにダメもとで「私は日本人ですが、教室を少し見学してもいいですか?」と言ってみると、「ご自身で少し見るぐらいならいいよ!」と言っていただきました。
ありがとうございます!早速お邪魔します。( ̄▽ ̄)
小さめの教室
上の画像は、入り口を入ってすぐのところにある教室の一つです。日本の小学校の教室と比べて、かなり小ぢんまりしてますよね。
椅子は2人掛けで、机が8個、合計16人ぐらいの教室。中央の黒板には、スペイン語の筆記体で書かれた文字が残っています。
文字が小さいですが、一行目の最後の方に “de lengua Española”と見えます。どうやらスペイン語に関する何らかの授業が行われている模様。
その左上には、スペイン語のアルファベット表が掲示してあることから、どうやら、スペイン語を学んでいるみたいですね。キューバの公用語はスペイン語なので、日本でいう「国語の授業」でしょうか。
そして黒板の上部には「012345678910」という数字も。
アルファベットと数字を勉強中ということは、もしかしたらここは低学年用の教室なのかもしれませんね!
掲示板
上の画像は、”Mural de Salud”と書かれてます。どうやらヘルスケア関連の、子どもたちへの掲示物がある模様。
真ん中あたりに、「果物と野菜」の絵と、子どもたちが手を洗う様子や、お皿を並べて食事をしている様子が描かれています。もしかしたら、「ご飯を食べる前には手を洗いましょう」といった啓蒙活動なのかもしれません。
また、左の方に鍋の絵と共に描かれている文章は、画像から少し解読できます。おおよその文章はこんな感じ。
“Hierva el agua durante unos minutos en un recipiente con tapa y desinfectela con hipoclonto al 1 por ciento 4 gotas por cada litro de agua.”
画像より(ざっくりとした抜粋)
日本語にすると、おおむね「蓋をした容器に入れて数分間煮沸し、水1リットルあたり1%の次亜塩素酸4滴で消毒します」といった内容。
どうやら、除菌とか消毒の仕方を指示しているようです。もしかしたら、あまり衛生状態が良くない場所があるのかもしれません。
いずれにせよ、日本の小学校の掲示物では、あまり見ない内容です。やはり日本という国のインフラは優秀で、恵まれた環境なんだなと思いました。
広めの教室
上の画像のように、広めの教室もありました。生徒用の机が15個以上あり、それぞれ2席掛けのようです。ざっと計算してみると30人用のクラス。
正面の黒板の上には、日本の小学校でいう「あいうえお」みたいな感じでしょうか、スペイン語の筆記体のアルファベットと、「読み方」が書かれています。
スペイン語では、”abc”=「アー、ベー、セー」と読むので、そんな「読み方を解説した表」が貼ってあることが分かります。
時間割を読んでみる
さて次は、小学校に貼ってあった時間割です。
フィデル・カストロの肖像画の隣に、”Horario General”と書かれた表があります。日本語でだいたい「一般的なスケジュール」のような意味。
時間割の中身を詳しくみてみると、こんな内容でした。
- 7:00 生徒を迎える
- 7:50 朝のトレーニング
- 8:00-12:40 授業やその他の活動
- 12:40-14:20 ランチ
- 14:20-16:20 授業やその他の活動
- 16:20 生徒帰宅
- 火曜日8:10-10:00 親への応対
- 火曜日~木曜日16:00-16:30 教育セミナー
ざっと見てみた限りですが、キューバの小学校では、朝7時から登校するようです。早い!子どもたちはまだ若いから良いにしても、先生方も早起きで大変ですね。
7:50「朝のトレーニング」というのは、詳しい内容は分かりませんが、軽い体操のような感じでしょうか。この辺は現地の人にインタビューしてみないと分からないですが、何となく「ラジオ体操」のようなイメージ。
そして、ランチが12:40-14:20の間、合計1時間40分です。日本の小学校よりも長い!開始時間も12:40からと、日本より遅めのスタートですね。
また、毎週火曜日に「親への応対」の時間が取られています。具体的にどんなことをするのかまでは、現地で聞いていないので不明ですが、もしかしたら先生と親が個別にお話する機会が定期的にあるのかもしれません。
更にその予定が、教室の前の子どもたちの目に付く所に掲示されているという、オープンな感じが良いですね。
小学校の壁に貼ってある歌
そして最後に、こちらも小学校の壁に貼ってありました。
楽譜と歌詞が書かれていますが、何の歌なのでしょうか。
後で歌詞を日本語に訳してみて分かったのですが、こちらの歌は、実は「キューバ国歌」だったのです。(不勉強で、キューバ国歌を存じませんでした!)
パッと歌詞を見ると、”combate”、”Patria”、”muerte gloriosa”という単語が目に付きます。どうやら戦争中の歌が国歌に制定されているようです。日本以外の諸外国では、比較的よく見られますよね。
当初、小学校にお邪魔した際は、筆者は歌詞の意味を理解していませんでした。ただ、「キューバの小学校には戦争の歌が飾ってあるのか…」と、日本の小学校との違いをひしひしと感じながら見学した記憶があります。
ご存知の通り、日本は第二次世界大戦の敗戦国です。その関係で、特に学校教育の場面で、戦争に関するコミュニケーションが制限されていると感じることがあります。
そんなこともあり、キューバのように、戦争についての歌を子どもたちがオフィシャルに歌えるというのは、驚きであり新鮮でした。
歌詞の内容を日本語に訳してみます。だいたい次のような意味。
祖国が誇りを持ってあなたを見ている
栄光の死を恐れてはならない
祖国のために死ぬことは、生きることだ
鎖に繋がれて生きることは
侮辱と汚名に中に沈んで生きること
ラッパの音を聞け
勇気ある者よ、急いで武器をつかめ!
「バヤモ」というのは、キューバの南部にある都市のこと。第一次キューバ独立戦争で、当時のスペイン帝国からの独立を宣言し、戦いの舞台となった場所です。
このバヤモの地で演奏された曲だったことと、フランス革命の「ラ・マルセイエーズ」を参考にしたことから、元々は”La Bayamesa”(ラ・バヤメサ)とも呼ばれていたのだそう。
祖国の自由のために闘争するための呼びかけとして、この歌が歌われたことにも関連し、キューバでは重要な意味を持っていたようです。
「バヤモの歌」がキューバ国歌に制定されたのは、1902年の独立の時。その後のキューバ革命を経て現代になっても、国歌としてずっと大切に歌われ続けています。
「バヤモの歌」には続きがあった
もう少し調べてみると、何と「バヤモの歌」には続きがあることが分かりました。国歌として制定された際、主に次の理由で後半部分は削除されたようです。
- スペイン人のプライドを傷つける可能性があったこと
- 国歌として、他国を尊重していないとみられる可能性があったこと
- 国歌として、長すぎるため
「長いから省略されたというのは何となく分かるけど、スペイン人のプライドを傷つけるって、一体どういう内容だったの?」と思い、筆者はその続きの歌詞を、スペイン語で声に出して読んでみました。
No temáis; los feroces íberos son cobardes cual todo tirano no resisten al bravo cubano; para siempre su imperio cayó. ¡Cuba libre! Ya España murió, su poder y su orgullo ¿do es ido? ¡Del clarín escuchad el sonido ¡¡a las armas!!, valientes, corred! Contemplad nuestras huestes triunfantes contempladlos a ellos caídos, por cobardes huyeron vencidos: por valientes, sabemos triunfar! ¡Cuba libre! podemos gritar del cañón al terrible estampido. ¡Del clarín escuchad el sonido, ¡¡a las armas!!, valientes, corred!
上記が「バヤモの歌」の後半です。これを読んでいるうちに、何だか感情に訴えかけてくるもの、こみ上げてくるものがあり、思わず泣きそうになってしまいました。
少し日本語に訳してみます。
獰猛なイベリア人は暴君のような臆病者だ
勇敢なキューバ人に抵抗するな
彼らの帝国は永久に滅亡した
キューバに自由を!
スペインはすでに死んでいる
彼らの力と誇りはどこに消えてしまったのか?
ラッパの音が聞こえてくる
勇気ある者よ!急いで武器を持て!!
見よ我らの勝利の軍勢を
(スペイン軍が)倒れているのを見よ
敗北して逃げ出した臆病者を
勇気ある者は勝利するのだ!
キューバに自由を!と叫ぼう
恐ろしい爆発音の大砲に向かって
ラッパの音が聞こえてくる
勇気ある者よ!急いで武器を持て!!
ちなみに筆者は、スペイン語の「翻訳家」ではないことをご了承ください。こういう文語的な詩は難しく、なんだか日本語にするとイマイチ。。(T-T)
ただ、これ以上は精度が上がらないので、やむなくこちらでリリースさせていただきます。スペイン語が分かる方がいたら、ぜひ原文を読んでみてください!
筆者は過去に中南米5か国と、北米のメキシコを個人で旅したことがあります。そして、どの国にいても必ず共通して目にするのが、「スペインからの独立」というメッセージでした。独立の時に流された同胞の血を表すモチーフが、国旗に残されている国もあります。
ラテンアメリカは、音楽や美術などのアートや大自然、グルメ、遺跡の宝庫で、現地の人も明るくて気さくな人ばかり。そんな光のように美しく輝く面がある一方で、「スペインとの支配、被支配の関係」という暗い影は、この地域全体に常に存在するようにも見えます。
そんな「ラテンアメリカの光と影」が、この歌詞にも表れているように思えたのです。
当初、キューバの小学校で前半部分を読んだときは、「小学校に戦争の歌が貼ってある!?」という驚きが先行してしまい、あまりその意味にまで思いを馳せることができませんでした。
今こうしてじっくり、全体的に目を通してみると、独立戦争当時の人たちの思いがひしひしと伝わってきました。
特に後半の歌詞は、日本ではほとんど知られていません。
ご縁があってキューバの小学校を訪れた者として、そしてスペイン語を少し理解する一人の人間として、「バヤモの歌」の続きを、敬意をこめてご紹介させていただきました。
まとめ
以上、キューバの小学校の前をたまたま通りかかったので、見学させてもらった時の話を書かせていただきました。
- キューバの小学校では、どんな教室で勉強してるのか
- 時間割ってどんなのか
- どんな歌を歌っているのか
上記のことが分かって、なかなか面白い体験でした。特にキューバ国歌にまつわる話は、知らないことばかり。快く見学させてくださった小学校の方には感謝です。
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました!
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